映画には大きく分けて二種類ある。娯楽性を重視した作品と、考えさせることを重視した作品である。
 映画に限ったことではないと思うが、両者を同じ基準で比較することは難しい。と言うのも面白さの質や基準、作品としての意義が大きく違っているからである。共通に計れる部分もあると思うが、そうでない部分もまた多い。そうすると、単純に比較は出来ない。
 娯楽作品は、「時間を忘れる楽しみ」と言う部分に大きな意義がある一方、シリアスな作品は見終わった後に考えさせ、「価値観を揺さぶる」ことに意義があったりする。娯楽作品を、「ただ楽しいだけで中身が無い」という理由のみで評価を下げることは出来ないのだ(もちろん、楽しくて中身があればそれに越したことはない)。

 両者を公正に評価するには、それぞれの面白さの質や意義の違いを理解した上で、それぞれの基準に照らして判断する必要がある。
 ただしそれぞれの基準がすなわちイコールになるかと言えばそれもまた何とも言えない。為替相場のように価値がはっきりしないかもしれない。また、娯楽作品と考えさせる作品の明確な違いもわからない。
 明確な線引きは出来ないが、楽しませることと、考えさせることの、二つの意義があり、単純に両者の優劣があるわけではないということを考慮する必要がある。
 2011年も始まりました。
 抱負みたいな物は特にありません。大言壮語すると大抵うまくいかない、と言うこともありますし、まあ粛々と、着々とやっていくだけです。
 初詣のおみくじで大吉が出ましたが。まあ、当てにならないんで。
 粛々と。
 今年を振り返ると、今年はそんなたいしたことはしてません。
 ちょっと色々悩んだりもしました。その点については結果が出ていないので何とも言えないですが、考えて試行錯誤したことが頭の中に雲みたいに塊になりかけて漂っている感じです。
 形になってないのでわかりにくいですがねー。

 健康面ではそれなりに良い状態を維持できている。多少体調を崩すこともあるけれど。2年前の悪い状態から考えると、全然違うし、管理できていると思う。
 映画を結構観たなー、今年は。読書はあまり出来なかった。読書に関しては体力を使うし時間かかるし、能動的でなければいけないけど、映画は受動的でいいからな。
 野球。スワローズが前半大きく躓いたのはきつかったが、後半の巻き返しは希望が持てた。
 服は今年はちょっと感覚の変化というか、気付きみたいな物があった。体型自体はそれほど変わってないんだけど、細身のジーンズが増えていたから、それに合うトップスが必要だとか、自分がどんな物が好きなのかとか、それをどうやって手に入れるのかとか、そういう部分。

 一年を振り返っても、こんなことをしたー、みたいなことが特別挙げられない。地味と言えば地味な一年だったかもしれない。
 結構充実してきている部分はあるんだけど、はっきりしていないし、微妙な変化だと思うからいまいち実感に欠ける。声高に叫べないような状況にかわりはないし、引き続き頑張っていきたい。
 とりあえず年内に見ようと思っていた2本の映画を見終わった。
 一つは「フェアウェル~さらば、哀しみのスパイ~」で、もう一つは「ぼくのエリ~200歳の少女~」。
 アカデミー賞外国語映画賞を受賞したという「瞳の奥の秘密」は当初はスルーするつもりが、シネマイ~ラの館主さんがブログで絶賛されていたので、どうしようか相当悩んだ。ただ1月中旬まで上映するらしいので、来年に譲ろうと思う。

・「フェアウェル~さらば、哀しみのスパイ~」10/12/24(e^ra)(フランス)
 ソ連のKGBに所属する男が、仲介役となった在ソ連フランス人と共に国家機密を西側諸国へ流出。冷戦の渦中における男の生き様を描いた話。
 背景説明が簡潔で気を抜くとこんがらがるが、全体的に重厚且つしっかりした作り。歯ごたえのある良い映画だった。見終わった後、席から立つのを忘れていた。

・「ぼくのエリ~200歳の少女~」10/12/28(e^ra)(スウェーデン)
 いじめに遭う内気な少年が不思議な少女(ヴァンパイア)と出会い、少しずつ変わっていく話。
 とてもペーソスに満ちているというか、哀愁漂う、悲しい映画。美術や照明、各種エフェクトなどと相まって、そういう意味では美しい作品だが、サスペンスなど物語としてのテンポは途切れがち。残酷でグロテスクな描写や話の展開には好みが分かれそう。

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 で、映画の順位ですが、これは木村拓哉も同じような事を言ってましたが、なかなか難しい。映画だけではなくて、あらゆる事に言えると思う。はっきりとした数字もないし、基準もないので。
 と言うことで、今回は大雑把に、ランク付けだけしたいと思います。
 A~Eまでの5段階にそれぞれを放り込んでいこうかなと。あくまでも個人的な評価です。
↓今年劇場で観た映画のランク分け。
『A』
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「ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない」(日本)
「アイガー北壁」(ドイツ)
「クロッシング」(韓国)
「BOX 袴田事件~命とは~」(日本)
「息もできない」(韓国)
「カラフル」(日本)
「パラノーマル・アクティビティ第2章~Tokyo Night~」(日本)
「ゾンビランド」(アメリカ)
「セラフィーヌの庭」(フランス・ベルギー・ドイツ)

『B』
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「ウォレスとグルミット~ベーカリー街の悪夢・他~」(イギリス)
「パラノーマル・アクティビティ」(アメリカ)
「アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~」(アメリカ)
「ハート・ロッカー」
「バグダッド・カフェ」(西ドイツ)
「マイマイ新子と千年の魔法」(日本)
「タイタンの戦い」(アメリカ)
「告白」(日本)
「借りぐらしのアリエッティ」(日本)
「インセプション」(アメリカ)
「ビルマVJ~消された革命~」(デンマーク)
「月に囚われた男」(イギリス)
「十三人の刺客」(日本)
「ねこタクシー」(日本)
「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」(日本)
「フェアウェル~さらば、哀しみのスパイ~」(フランス)

『C』
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「キャピタリズム」(アメリカ)
「母なる証明」(韓国)
「ライアーゲーム~ザ・ファイナル・ステージ~」(日本)
「海角七号~君想う、国境の南~」(台湾)
「誰がため」(デンマーク・チェコ・ドイツ)
「ウディ・アレンの夢と犯罪」(イギリス)
「アウト・レイジ」(日本)
「密約~外務省機密漏洩事件~」(日本)
「川の底からこんにちは」(日本)
「アルゼンチンタンゴ~伝説のマエストロたち~」(アルゼンチン)
「闇の列車、光の旅」(アメリカ・メキシコ)
「ハーツ・アンド・マインズ~ベトナム戦争の真実~」(アメリカ)
「ネコを探して」(フランス)
「ぼくのエリ~200歳の少女~」(スウェーデン)

『D』
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「つむじ風食堂の夜」(日本)
「脳内ニューヨーク」(アメリカ)
「踊る大捜査線THE MOVIE3~奴らを解放せよ~」(日本)
「BECK」(日本)
「キャタピラー」(日本)
「オーケストラ」(フランス)
「小さな命が呼ぶとき」(アメリカ)
「THE COVE」(アメリカ)
「武士の家計簿」(日本)
「樺太1945夏 氷雪の門」(日本)
「あの夏の子供たち」(フランス)
「ウィンター・ソルジャー」(アメリカ)

『E』
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「リミッツ・オブ・コントロール」(アメリカ)
「地下鉄のザジ」(フランス)
「モダン・ライフ」(フランス)

 とりあえずこんなところかなあ。
 かなり判断に悩んだ作品もありますが。
 ちなみに劇場以外できちんと観た作品が一つだけありますが、それは
『B』
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「300」

 としておきます。

 こうやって仕分けてみると意外と楽しんでいるんだなと思う。観ているときとか見終わった後とか、結構不満を感じている印象があったんだけど。それとも評価が甘くなっているだけだろうか。
 一つには、映画を多角的に考えて、思い切って評価を下げられなかったりする部分もあるが。
 最終的には自分の感覚だよなあ。
 観た後このブログに詳細な感想を書いていない映画の簡易感想。
 括弧内のアルファベットは映画館。e^raは「シネマイ~ラ」のこと。tohoは「TOHOシネマズ」のこと。tvはテレビ放映。

・「海角七号~君想う、国境の南~」10/4/15(e^ra)(台湾)
→第二次大戦終戦前後の日台男女の交流と、現在の両国の男女の交流を音楽を交えて描いたエンターテインメント映画。ポップでユーモアが効いていて、でもちょっとした隙間にセンチメンタルが見え隠れして。台湾で大ヒットしたらしく、確かに面白いが、ずば抜けているようには思わない。

・「誰がため」10/4/16(e^ra)(デンマーク・チェコ・ドイツ)
→ナチスに対抗するレジスタンスたちの活躍と苦悩。盲信の危うさと、それを利用する人間の腹黒さ。戦時下(占領下)の悲劇。

・「地下鉄のザジ」10/4/26(e^ra)(フランス)
→少女・ザジがパリであっちへ行ったりこっちへ来たり。抽象的でスラップスティック的な、意味があるのか無いのかわからない映画。難解なサイレント映画というか。

・「300」10/5/9(tv)(アメリカ)
→300人の精鋭スパルタ兵が圧倒的大軍のペルシャとドンパチ。様式美に特化。

・「マイマイ新子と千年の魔法」10/5/13(e^ra)(日本)
→原作を書いた高樹のぶ子の自伝的作品。アニメーション。空想好きの新子が転校してきた少女や学校の仲間達と交流し、それぞれに大切な物を見つけていく。
 ややまとまりに欠ける気もするが丁寧に作られた映画で、見終わった後は心地良さが残る。

・「タイタンの戦い」10/5/14(toho)(アメリカ)
→ギリシャ神話のペルセウスのエピソードを基にした映画。完全なるエンターテインメント作品。ワクワクドキドキして見終わったらスッキリ。

・「ウディ・アレンの夢と犯罪」10/6/11(e^ra)(イギリス)
→イギリスの兄弟の悲劇。まとまりが良い、まとまりが良すぎて逆にどうなの? と感じてしまうほどにうまくまとまった小品。

・「告白」10/6/14(toho)(日本)
→娘を殺された教師と殺した犯人と彼らにまつわる人々の告白。映像表現、構成力、と世間一般の価値観をしらっと覆す言動でインパクトのある内容。悲しみだけを置き去りにしていって、見終わった後あたふたさせられる映画。

・「アウト・レイジ」10/6/14(toho)(日本)
→北野武のバイオレンス映画。ヤクザ内のいざこざで裏切ったり裏切られたり。従来の北野映画を観ている人には目新しいことはないと思う。

・「アイガー北壁」10/7/20(e^ra)(ドイツ)
→未踏の難所、アイガー北壁に挑む登山家の凄絶なる挑戦。丁寧でメリハリが利いていて、サスペンスとドラマに満ちている。素晴らしい。

・「クロッシング」10/7/23(e^ra)(韓国)
→北朝鮮で暮らす一家の辿る道。作品としてもしっかり作られていてのめり込めるし、メッセージ性や啓発的意義だけではない。

・「借りぐらしのアリエッティ」10/8/1(toho)(日本)
→人間と小人の交流。作品世界の雰囲気や演出には好感が持てるが、脚本に疑問。

・「インセプション」10/8/14(toho)(アメリカ)
→夢の中に入り込んでアイデアを盗む男たちの大仕事。話(メッセージ)自体は単純。あとは世界観と大がかりなVFXを楽しむ映画。最初から最後までサスペンスとテンションを維持していくので、飽きずに観られた。

・「密約~外務省機密漏洩事件~」10/8/20(e^ra)(日本)
→かつて外務省の機密が毎日新聞にすっぱ抜かれた(漏洩した)事件を取り扱ったノンフィクション的ドラマ映画。問題提起をしてこういったことを観客に考えさせるという意義は大いにあるが、論点がずれている臭いので残念。

・「Box 袴田事件~命とは~」10/8/27(e^ra)(日本)
→実際に起こった出来事を基に作られた映画。合理性に欠く取り調べと裁判で有罪にされた袴田死刑囚。彼と一人の裁判官の苦悩を描き、日本の司法や警察の問題点を浮き彫りにする。素晴らしい映画。啓発的な意義が大いにある。「それでもボクはやってない」やこの映画などを観ていたせいか、大阪地検特捜部の例の改竄事件を聞いても驚かなかった。世の中をフラットに、慎重に見ることが出来るようになる映画。

・「息もできない」10/8/27(e^ra)(韓国)
→孤独なヤクザと少女の交流。孤独と温もり。バイオレンスと触れ合い。怒りと優しさ。対比が美しく、悲しい。良い作品。

・「踊る大捜査線THE MOVIE3~奴らを解放せよ~」10/9/1(toho)(日本)
→人気シリーズ最新作。新湾岸所へ引っ越してドタバタ。これは明らかに脚本に問題があるような気がする。

・「カラフル」10/9/1(toho)(日本)
→原恵一監督のアニメ作品。森絵都の原作小説を映画化。人を活かす映画。

・「ビルマVJ~消された革命~」10/9/10(e^ra)(デンマーク)
→ビルマ(ミャンマー)の民主化を望む活動家達が、逮捕の危険を負いながら、世界に発信するための映像を現地で撮影している。その映像を基に作り上げたドキュメンタリー映画。希望と限界が映っている。

・「BECK」10/9/14(toho)(日本)
→人気漫画の映画化。地味で平凡な男子学生がRock musicと出会ったことによって変化していく話。原作のエピソードを時間内でうまくまとめてはいるが、話の軸を考えると、中途半端に思えた。また音楽映画的カタルシスも少々欠く。

・「キャタピラー」10/9/20(e^ra)(日本)
→戦争で四肢を亡くした夫を世話する女性の話。単館系の映画にしては珍しく大ヒットした模様だが、理解出来ない。俺も観たわけだけど。寺島しのぶ効果?

・「月に囚われた男」10/9/22(e^ra)(イギリス)
→月でたった一人、資源を採掘する男の話。難解な展開かと思いきや明快で、まとまりも良く、面白かった。

・「川の底からこんにちは」10/9/22(e^ra)(日本)
→自分なんてこんなもん、と言う諦めきった女性が開き直り、駄目人生を肯定する映画。地味で退屈しそうという事前のイメージが覆され、ユーモアも効いていて思いの外楽しめたが、でも一般的に受けるかというと微妙。脚本も書いていたようだが、別の人が書いた脚本を撮ったときにどうなるのか観てみたい。

・「13人の刺客」10/10/1(toho)(日本)
→暴君を13人の刺客が襲っちゃう映画。慎んでしまうような部分を気にすることなく踏み込んで表現している点には快哉。最後の殺陣がただ斬りまくっているだけという点が個人的に残念だった。

・「オーケストラ!」10/10/6(e^ra)(フランス)
→ロシアの演奏家がかつての楽団を呼び集めて、フランスで曰く付きの女性と共演する話。日本でもありそうな、ちょっと無茶な展開のエンタメ作品。シリアスなテーマを内包しているが、作りが雑に思える。

・「モダン・ライフ」10/10/6(e^ra)(フランス)
→フランスの寂れた農家で働く人々と対話する様を微動だにしないカメラでひたすらじっと撮り収めた作品。現代農家の一場面を切り取ってはいるのだろうけど、観ている人のことは少しも考えられていないと思えるほどに退屈な映画だった。

・「小さな命が呼ぶとき」10/10/22(e^ra)(アメリカ)
→難病の子供を救うために独立して会社を設立した男の実話に基づいた話。手際よく作られているが、ドラマとして少々疑問。どの程度実話に沿っているのか、それによる制限などもあろうが。

・「ねこタクシー」10/10/29(e^ra)(日本)
→コミュニケーション不全の男が、ひょんな事から出会った猫を通して再生していく話。カンニング竹山が内気な主人公を好演。全体的に優しい雰囲気の作品で、スムーズで、良い映画だった。

・「THE cove」10/11/19(e^ra)(アメリカ)
→日本の太地町のイルカ漁を批判したプロパガンダ映画。ちょっと客観的に観ることが出来なかった。感情に訴えかける作りだが、そんなの、どんな動物だってそうだろ。

・「アルゼンチンタンゴ~伝説のマエストロたち~10/11/24(e^ra)(アルゼンチン)
→往年のタンゴの名手達を集めて録音する風景を収めた映像を、映画用に編集したもの(?)。ステージでの演奏も含まれていて、皆誇りや郷愁が滲み出ているところに感銘を受けた。CDを欲しくなる。

・「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」10/12/1(toho)(日本)
→宇宙戦艦ヤマトを大金掛けて実写映画化した作品。日本の大型エンターテインメント作品にしてはアクションもドラマもうまくまとまっている。が、それ以上でもそれ以下でもない。戦闘機の動きが軽すぎて重厚さが感じられなかったのが残念。

・「パラノーマルアクティビティ第2章~Tokyo Night~」10/12/1(toho)(日本)
→アメリカで怪我をして帰国した姉と、彼女を世話する弟の身の回りに起こる異変。いわゆるモキュメンタリー。1作目とほとんど筋は一緒だが、うまく日本風にアレンジできている。前作を知っていると怖さは多少減じるが、それでも良いホラー映画だ。

・「闇の列車、光の旅」10/12/3(e^ra)(アメリカ・メキシコ)
→メキシコ経由でアメリカへ逃げようとする少女と、メキシコギャングの一員である少年の逃亡記。因果と再生産。寺島進似のギャング。
 話としては面白く見られたが、テーマが弱い気がする。

・「ハーツ・アンド・マインズ~ベトナム戦争の真実~」10/12/9(e^ra)(アメリカ)
→現地で撮影された映像や、帰還兵のインタビューなどで構成された作品。作られたのはずいぶん前で、基本的には当時の戦争を告発する内容。肯定派も出て来るが、彼らの意見に違和感をもたせるように作られている。この作品を見ていると、イラク戦争を思い浮かべてしまう。しかし映像の力というのは凄まじい。

・「ゾンビランド」10/12/9(e^ra)(アメリカ)
→ゾンビが溢れかえった世の中で出会った孤独な人間達の繋がり。ゾンビ映画らしくとてもグロテスクで下品な映画だが、そこさえ我慢できれば非常に素晴らしい映画。ただのゾンビ映画と思う無かれ。笑えて感動できる。

・「武士の家計簿」10/12/14(toho)(日本)
→算術に長けた武士の人生。キャスティングが絶妙。ただ構成がどうなんだろうか?

・「ネコを探して」10/12/15(e^ra)(フランス)
→飼い猫を探して世界のあちこちを旅する。猫を通して人間社会の歪さを指摘する。意外と社会派映画。ドキュメンタリーだね。日本での取材が多め。

・「セラフィーヌの庭」10/12/15(e^ra)(フランス・ベルギー・ドイツ)
→実在のセラフィーヌ・ルイという変わった女性が画家として見いだされ、その後辿る人生を描く。動機付けや伏線、人物描写、作品の雰囲気やカットの繋ぎなど、とても丁寧に作られている。好感の持てる作品。個人的にとても好きな作品。

・「樺太1945夏 氷雪の門」10/12/16(e^ra)(日本)
→終戦前後、樺太をロシア(ソ連)に蹂躙され、散っていく人々の物語。映画として啓発の意義はあるが、面白いかどうかは別。

・「あの夏の子供たち」10/12/17(e^ra)(フランス)
→映画製作会社を経営する男とその家族の辿る道。中盤で大きく展開と作風が変わる。やろうとしてることはなんとなくわかるが、動機付けや感情の積み上げが淡泊で、全体的に平坦な印象。

・「ウィンター・ソルジャー~ベトナム帰還兵の告白~」10/12/17(e^ra)(アメリカ)
→ベトナム帰還兵へのインタビュー映像で構成された作品。基本的に最初から最後までずっと現地での行為や見聞きした事を話しているので、盛り上がるとかそういうことはない。ほぼずっと同じトーンなので、そこがやや疲れるが、話している内容は非常に凄絶。
 見た後に感想をまだ書いていない映画はいつものフォーマットでこれからもポツポツと書いていく予定。
 ただペースが何分遅いので、簡易的な感想をまとめて書こうと思います。
 今月はあと2~3本ほど観る予定なので、どうしようかなー。来年にまとめて書くか、とりあえず今観ている物は今書いておくか。
 で、その簡易的な感想を書く理由はこういうことです。
 昨年、自分が観た映画の中での年間ベスト3を書いたんで、今年もそれっぽいことを総決算と言うことでやりたいんで、それにちなんでと言うことですが。
 そのベスト~もいつ書こうか。越年するかもしれないし。そうでないかもしれないし。

 今年の全体的なまとめはどうしようかな。大した事してないし。簡単にしとくか。
 10年3月17日に観た「脳内ニューヨーク」の感想。
 ネタバレ注意。
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・筋
 舞台の演出家をしているケイデンは芸術家である妻との仲が芳しくなかった。妻は娘を連れて家を出て行き、良い雰囲気となった劇場の受付嬢とも一線を越える決断が出来ない。
 そんな折、天才賞の別名をもつマッカーサー・フェロー賞を受賞し、その賞金を基に新たな舞台に取りかかる。
 それは、ニューヨークの中に実際に自分の経験したもう一つのニューヨークを作り出すという仕事だった。
 やがて人間関係は複雑に折り重なっていき……。
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・趣向
 チラシが原色を多用した色遣いで非常にポップだった上、あらすじなどもわかりやすく、面白そうだと思って見に行った映画。
 しかし実際の所、チラシのポップさとはかけ離れた、かなり作家性の強い難解な作品で、見終わったときには頭がこんがらがっていた記憶がある。
 もうこれは詐欺じゃないのかと思うくらいかけ離れていたが、配給会社からすればうまく客を呼ぶために必死になって考えた結果なのだろう。チャーリー・カウフマンという時点で警戒しとけ、と言うことか。

 監督は過去に「マルコヴィッチの穴」や「アダプテーション」など、突飛な発想による癖のある脚本を書いてきたチャーリー・カウフマン。自分も「アダプテーション」を当時見たことがあるが、変な映画だなあという感想を抱いた。
 今回は初監督作品となるが、相当に変な映画だ。

 映画は一貫してダウナーというか、滅入りそうになるようなトーンで展開される。淡々としていて、抽象的でわかりにくく、時に不気味で奇妙。
 しかし、それでいて全く意味がわからないかというとそうでもない。雰囲気はある映画だし、しっかり探れば意味を見いだせそうで、引き込まれる面もある。
 チャーリー・カウフマンという評価されている人が監督しているからか、それともアメリカ映画の体力なのか、それなりに金もかけられているように見えるし、チープな作りには見えない。
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・個人的な感想
 この映画を見終わった後も、この映画の感想をまとめようとしていたときも、結構色々考えた。一体何を言いたいんだろうこの映画は、と。
 色々頭の中に、ああじゃないだろうか、こうじゃないだろうかと浮かびはした物の、結局の所完全にまとまることはなかった。本当に意味がわからない。
 しかし先にも描いたとおり、俺の知識が足りないだけで、あるいは俺がしっかり考えていないだけであって、ちゃんと注意深く読み取ればそこには何か意味のある物が含まれているのではないか、と思わせてしまうような作りにはなっているため、何度も何度も再び考え込んでしまうのだ。

 実際の所本当にそうなのかもしれない。作品のあちこちにはそれらしいようなヒントめいたセリフや、詩の引用や、抽象的な表現が散りばめられている。作品タイトルも原題はもっと意味深なのだ。

 しかし、しかしである。これはあくまで個人的なポリシーというか価値観でしかないのだが、伝わらなければ意味がない、と思うのだ。
 知識や見識のある人にはとても豊かな埋蔵物のある映画だとしても、その他大勢の人には掘り進められないほど難解で、全く伝わらないのであれば、それはあまり意味がないと考えるのだ。
 そういう観点からは、自分はこの映画を評価できない。

 ただ、なんでも、どの分野でもそうだが、振り幅というのは大切だと思う。
 とてもわかりやすい作品がある一方で、こういった難しい作品があるというのは、バランスという意味でも意義があるのだと思う。
 わかりやすければいいのかというと必ずしもそうではない。難しいことにぶつかって考えることで、新たな発想が生まれることもある。難易の両極が広がれば平均からの振り幅も大きいし、そういった幅は多様な物を受け入れ、生み出す土台ともなり得る。
 そういう観点からは、一定の評価が出来る。
 10年3月14日に観た「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」の感想。
 ネタバレ注意。
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・筋
 女子大生・神崎直の元に届いた手紙とテープ。それは巨額のマネーを奪い合うことが出来るライアーゲームへの招待状であった。
 自分の意志とは無関係にそのゲームに参加することとなった彼女だが、根が正直であり、人の善意を信頼する性分のため、たちまち窮地に立たされる。そこで頼ったのが天才詐欺師と呼ばれた秋山深一だった。
 二人は勝ち上がり、このゲームの真の目的を明かし、大会を潰そうと決意する。紆曲の過程を経てついに決勝戦へと到達したその舞台には、エデンの園を模した会場とゲームが用意されていた。
 全ての人間が利益を得るためには信頼と思いやりが要求されるこのゲームだが、のっけから参加者の利己的な行動に振り回される神崎直。
 決勝まで到達した猛者達の駆け引きは果たして……?
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・切り口
 人間というのは、経験で作り上げられる生き物である。
 経験せずとも推測したり想像したりすることである程度のことは理解したり共感したりすることは出来る。しかし、身に迫る物を得るにはやはりその物を体験しなければ、実感とはなりにくい。
 経験することで初めてわかることがあるわけだ。

 食べ物の本当の美味しさは、お腹が減っているときにこそ味わえるもの。
 防寒具の有り難みは、凍える季節にこそわかる。
 人の優しさも、自分が傷ついているときにこそ身に染みて感じられるのだ。

 この作品に登場する人物達は、皆最初は醜い利己的な思惑によって動いている。欲を実現するために権謀術数を巡らし行動する。神崎直が、損をする者を生まずに、皆平等に利益を得られる案を説いて回るが、なかなか受け入れられない。
 それは他人を信頼できないと言うこともあるが、一つには自分達の欲を実現しようとする意志があるからでもある。
 彼らはここまで勝ち上がってきた強者達だ。多少の失敗もあったかも知れないが、最終的に勝ち上がればそれらは全てひっくるめて自分の功績となる。自尊心と自信を膨張させる。
 そういった時に、人への優しさなどは意味を成さない。自分の能力で勝ち取った成功、それが世界の全てとなるからだ。目の前にチャンスがある。欲も、実現させる自信もある。むざむざそれを捨てるのか? いや、叶える、自分の手で。

 しかしだ。人間というのはやはり失敗する。多くの人間は負けを味わう。その時こそが問題なのだ。
 勝っているときはいい。勝てば全てが正当化されるのだから。多少の非難があっても、実際的な成功と、自己評価の上昇で振り払える。それが本当の意味の幸せかはわからない。人間として価値があることなのかはわからない。ただ自分の欲求を満たすことは出来る。
 しかし負けたときには逆に、大切な物を失うことになるのだ。
 それは賭け事の程度にもよるが、自信、プライド、財産、社会的信用、正当性、地位、名誉、友人、あるいは家族、つまり人間関係、そういった諸々の物が自分から逃げていく。
 喪失感と共に、暴露された自分の醜さに打ちひしがれ、自棄に陥る。
 その時に、手を差し伸べられたら。

 神崎直に関わった人は、なぜか心を入れ替える。不思議なほどに。
 彼女は馬鹿正直で、すぐ人に騙される。しかしそれでも人を信頼することを止めない。そういった彼女の一貫したスタンスが安心させると言うこともあるのかもしれない。しかしそれとは別に、敗れて落ちぶれた惨めな境遇の時にも、笑顔で手を差し出してくれるからこそ、ささくれた気持ちが潤い、気持ちを改めるのだろう。
 敗れたときは、回りの全てが敵に見えるものだ。諦めたり、打ちのめされたり、自己評価の下がった自分を守ろうともする。
 そんな時こそ、本当に大切な物がなんであるのか、一番理解出来るのかも知れない。それを教えてくれる人が傍にいれば、その体験はその後の人生を変える何よりも大切なものとなるのかも知れない。
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・趣向
 原作はマンガで、その後テレビドラマ化された本作(確かそうだよね?)。
 自分はマンガは未読。テレビドラマはファーストシーズン、セカンドシーズンの両方を見た。

 基本的にはテレビシリーズのスタイルをそのまま踏襲している作り。作品自体が嘘、裏切り、駆け引きの応酬を見せ物としているため、その世界観を各分野で演出している。
 映像は映画的というよりテレビのようなすっきりした感じの印象。話自体の展開が早いため、それに合わせるようにカット割りが多く、素早いテンポで切り替わる。バラエティ番組でよくあるように、同じセリフを繰り返し再生するなど、とにかく見せ方を工夫していて、そこは従来のドラマとはっきり違う。
 美術は、どこか現実離れしたような妖しさと華やかさを合わせたように飾られている。照明も様々な色を使って場面に応じて照らしているが、基本的な色調は妖しさを醸すためか暗め。使われている音楽は中田ヤスタカによる電子サウンドで、ポップ且つ刺激的に扇情している。
 全体的にスタイリッシュであり、ポップであり、妖しい。

 ストーリーは先に書いたようにとにかく展開が早い。そのため、ゲームのルール説明も矢継ぎ早。自分のように頭の回転の遅い人間には、はっきりと理解出来なかったり、理解出来たとしても応用まで考えている暇がない。
 なので、誰かが策略を披露したり、それが覆されたりしても、確かめられない。とにかく起こった出来事に対して、そうなんだ、そうなんだと追っていくだけになってしまう。
 そこは好みが分かれるかも知れないが、この作品の良いところはそういったテンポの速さと、状況が刻々と変化する所にあるので、割り切ってしまって良いのかもしれない。 

 テレビドラマを見ていない人間がこれを見て楽しめるかどうか、理解出来るかどうかについては何とも言えないが、一応キャラクターもわかりやすいし、入り組んだ人間関係というわけでもないので、問題はないのでは。

 役者の皆さんは数が多いので、出番の少ない方は本当に少ない、モブキャラのような感じになってしまっていた。
 また、皆さん無難にこなしていたように感じるが、どうにも迫力不足に感じてしまう面もある。本当に全国から勝ち上がってきた人達なのか? と思えてしまった。それはもちろん脚本での人物の描き方もあるのだろうが、キャスティングにも一因があると思う。二時間ちょっとでまとめなければいけないわけで、全部が全部やり手というわけにはもちろんいかないだろう。翻弄されたり、秋山が比較優位に立つような相手でなければいけない部分もある。コミカルさを描く意図もある。
 しかし、決勝戦にもかかわらず、主体性が無く、知性があまり感じられない人が多いのは、本作の内容からするといかがなものかと思えるのだが。

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・個人手な感想
 面白かったかと聞かれれば、まあまあそれなりに楽しめたと答えられるが、それ以上でもそれ以下でもない感じ。
 元々大きなストーリーがあるというよりは、各ゲームでの駆け引きを楽しむための作品なんで、それで良いのかもしれない。神崎直の成長物語として見られれば。
 最後にしてはあまりライバル達が強くないなと思えたり、展開の都合が良いなと思えたりもするが。
 いずれにしても、日本のドラマの中ではこれほどエンタテインメント色が強くてスタイリッシュな作品も珍しいのでは。それだけでも価値があるのかも知れない。

 濱田マリと鈴木浩介さんの掛け合いが面白かった。間が絶妙だったなあ。
 関めぐみさんは以前はただ単に綺麗な人だなあと思っていたのだが、最近時々見るにつけ、その特徴的な顔付きが目に付くようになってきた。確かに正統派のヒロインと言うよりは、ダーティな役も似合いそうな顔ではある。
 でも、「ハチミツとクローバー」の時は素直に可愛かったなあ。
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・うろ覚え気になったセリフ
「いいんじゃないですか。人を助ける、優しい嘘なら」
 10年3月14日に見た「ハート・ロッカー」の感想。
 ネタバレ注意。
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・筋
 イラク。アメリカが多数の兵士を送り込み治安維持に努める地で、ある日、一人の兵士が爆弾によって殉職した。
 後日、ブラボー中隊爆発物処理班に、新たなリーダーが配属されることになる。ジェームズ二等軍曹率いる3人の爆発物処理班は次々と仕事をこなしていくが、ジェームズの死を恐れていないかのような行動に、サンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は不安を募らせていく……。
 緊張の続く日々の中、ジェームズは現地の少年と親しくなるが……。
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・切り口 
 この映画はイラクに派兵されたアメリカ兵の視点で描かれている。そして、彼らのことを綴った映画である。
 それはつまり、イラクの人間を描いてはいないと言うことである。この映画において彼の地の人間達は全くもって異質な存在として登場している。
 言葉が通じない、文化も違う、表情も読めない。ディスコミュニケーションの状態で、お互いに相手を警戒し、緊張し、溝の反対側に置いているのである。
 そうなってしまう最大の要因という物が、イラク国内で起こっている紛争である。
 アメリカ兵はイラクの治安維持のためにそこにいるわけだが、すでに知られているように、関係のない民間人を誤射、誤爆したり、戦闘に巻き込んでしまったりしている。また、アブグレイブ刑務所での一件のように、横暴な振る舞いをイラクの人間に対して行っている面もある。
 イラクにいる人間達はそういったことからアメリカ兵に対して恐怖を抱くと同時に、憎しみも芽生えさせている。一向に改善されない治安や、生活、そして殺される家族達を見てそうなるのだ。

 一方のアメリカ兵達も、いつ死ぬともわからない戦地に身を置くことで大きなストレスを溜め込んでいる。
 異質な人種、文化の中でコミュニケーションが取れず、テロリストやゲリラ達と生死を賭けた戦いを行わなければならない。特に、自爆テロや爆弾テロと言った物は、どこに、誰に仕掛けられていて、いつ爆破されるかわからないという性質の物であり、常に緊張を余儀なくされる。
 この恐怖は、彼の地の人間を全て敵に見えさせるのに充分である。

 お互いがお互いを恐怖し、憎しみ合うことで溝が深まっていく。本来ならばうまく付き合うことが出来たかも知れない関係は、不安定な情勢の中で大きな隔たりを生み出して、全く理解の出来ない存在となってしまう。
 相手と付き合うことで疑いや、対立や、悲しみを生み出してしまうのならば、もはや関係を断って、没個性の異質な存在として遠巻きに見ていた方が楽なのである。

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・趣向
 映画は基本的に、戦闘や爆弾処理のシーンが多い。登場人物が語り合うような静かな場面というのは割合少ない。
 主人公達は爆弾処理班と言うことで、爆弾と絡むことが多いのだが、その緊張感たるや、見ていてかなり身構えてしまった。きちんと爆破のシーンもあるので、その時の衝撃の凄まじさを見ると尚更だ。
 そういった、現場での戦闘や解体処理の場面を多くすることには幾つかメリットがあるのだろう。
 一つには単純に、映画として客を引きつけるための効果だろう。アクション、スリル、サスペンス、そういったもので飽きさせないようにしているのだ。
 一方で、強烈な緊張感を強いる場面が続くため、見ていてへとへとに、少なくとも自分はなった。これはアメリカ兵達の過酷さを演出するのに十分な効果があると思う。
 こういう、誰が敵でもおかしくないような状況、いつ死ぬかわからない状況に身を置いたときのストレスを、身をもって感じられる作りにはなっている。

 恋愛だとかユーモアだとか、そういった要素はほとんど無い。かなりシリアスでヘヴィーな映画だ。
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・個人的な感想
 正直、これがアカデミー賞作品賞か? と、観た当時は思った。
 他の候補作や、候補外の映画など、ほとんど見ていないので、比較は出来ない。ただ単純にそう感じたのだ。
 確かにサスペンスとして凄まじい映画だとは思うが、それほどの物だろうか? と。
 しかし、映画が賞を受賞したり、観客動員が伸びるなど支持を受けるには、何かしらの理由があるのだと思う。
 この映画の場合は、その当時のアメリカにおいて、イラク派兵に対する問題意識が、やはり少なからずあったのだろうと思う。そして、アメリカ国民の意識か無意識の中にあったそれに触れたのだ。
 アカデミー賞受賞作とは言え、長い歴史の中で淘汰されずに生き残っていけるかはわからないが、少なくともこの映画には、アメリカの映画賞であるアカデミー賞で受賞する、大きな理由があったのだ。
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・うろ覚え気になったセリフ
「俺が死んでも両親は泣いてくれる。でも、それ以外で俺のために泣いてくれる奴が一体何人いる?」
 体調崩した。
 あちこち痛い。勘弁して。
 もう治りますが。
 治りかけてまた悪化した。10/11/25
 とりあえず良くなってきた。10/12/07
 10年3月6日に見た「バグダッド・カフェ(ニュー・ディレクターズ・カット版)」の感想。
 ネタバレ注意。
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・筋
 ドイツからの旅行でアメリカにやってきたジャスミンは旅の途中、融通のきかない夫に愛想を尽かして車から降り、一人で歩き出す。
 荒野の幹線道路にポツンとある、モーテル兼ガソリンスタンド兼カフェの「バグダッド・カフェ」に辿り着くと、そこには全てに苛立つ女主人のブレンダがいた。
 どうしようもない夫、家を手伝わない子供達、個性的な宿泊客……。
 寂れたそのカフェにジャスミンが泊まり始めてから、少しずつ変化が起こり始めて……。
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・切り口~整理・清算~
  この映画で使用された「calling you」の歌詞は、この映画のほぼ全てを語ってていると言える。
 人の関係とは誠に不可思議な物なのである。
 どこに行っても弾かれて当てはまらなかったのに、ある場所ではそれまでが嘘のようにうまく馴染んでしまうことがある。それは極端な例だとしても、日常において、多かれ少なかれ、何かしらそういった相性という物があるような気がする。
 それはその時のその人達の状況や内面がうまく補完し合う形になっているか否かによって生まれるのだろう。
 だから一時は気が合っても、いつまでもそうとは限らない。というのも、この世界は常に変動していて、多くの人間は時間が経つにつれて変化するからだ。
 かつて自分にとって重要だった関係も、必ずしもその後重要であり続けるとは限らない。そういった時にどうするべきかはその状況にもよる。
 修復を望むのであれば試みればいい。2割3割の不満があっても、大方満足いくまでに改善されるかも知れない。しかし修復ではどうにもならないこともある。
 関係の修復によって、自分の求める重要な要素を手放さなければいけなかったら?
 それは自由であるかも知れないし、楽しい生活であるかも知れない、あるいは金銭かも知れない。
 それらを放棄してもなお、その関係を継続することに堪えられるのか? 意味を見いだせるのか?
 思い切って関係を清算して、新しい道を探し出すことも一つのやり方なのだろうと思う。移り変わる世の中で、自分の身を置ける場所を探し出す決断は、あなた自身を幸福にするかも知れないし、同時に、欠けていたピースを探し求めている、知らない誰かをも幸福にすることなのかも知れない。
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・趣向
 1987年に西ドイツで製作され、日本でも平成元年に公開されてヒットをしたという本作。その後完全版が上映され、2008年に再び監督が手を入れて調整した本作が公開された。
 自分は今回が初見。
 衣装など、時代を感じさせる部分もあるが特に海外と縁のない自分からするとあまり気にならなかった(娘の衣装にはさすがに違和感を感じるが笑)。
 色調も調整されていると言うことで、良いあんばいでした。

 ストーリーに関しては、最初インディーズ系の作家チックな作りかと思わせるシーンで始まり、少々不安を抱いたが、その後は順調に親しみやすいドラマとして展開していく。
 派手な映画ではないし、どちらかというとゆったりした部類の作品で、一部セクシャルな描写が入ったりもするけれど、独特の間とユーモアと優しさが、何とも言えない心地良い空気を生みだし、作品全体を包んでいる。
 脚本やカット割り、撮影などが効果的だったのではないだろうか。
 出演俳優が良かった。言葉はわからないので、演技の出来についてはいまいちわからないが、それぞれがそれぞれの個性的なキャラクターを演出できていたのではないだろうか。
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・個人的感想
 最初、この作品のことを知らなかった自分は、見る前に不安を感じていた。一体どんな映画なのだろうか? 面白いのか? 作家性の強い、難解な作品ではないのか?
 ところが蓋を開けてみれば、非常にわかりやすい映画で、最後までとても楽しめた。
 新しい道を歩み始めた女性が、新たな場所で人間関係を築き(カフェの一家や、宿泊する個性的な客達)、人も商売も立て直していくそのストーリーは、見事なほどハッピーな展開だった。
 若干癖はあるが、是非万人に勧めたい映画だった。

 所で自分の考えの一つとして「内面は外面に現れる」という物がある。
 切り口のところでも書いたけれど、この作品は「整理」が一つのキーワード。うまくいかず苛つくブレンダ、彼女の経営するカフェ兼モーテル兼ガソリンスタンドは荒れ放題なのだが、これはもちろんうまくいっていないことや彼女の心の状態を表す演出である。しかし同時に真理でもある。
 これらが整理され、ブレンダやその一家の着る服、表情が変化していくのは、彼女らの内面が変化していくことの表れでもある。外側が整理されたから内面も整理された、とも言えるし、その逆も言える。
 いずれにしても、外側と内側は繋がっているのである。
 よく外見で人を判断するなと言う人がいるが、そんなことはない。外見は重要な判断材料なのである。
 10年2月19日に見た「母なる証明」の感想。
 ネタバレがあるので注意。
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・筋
 親子2人で暮らす息子トジュンとその母。
 トジュンはもう大人に差し掛かっている年齢なのだが、母は幼い子供のように接し、可愛がっている。それには幾らかの理由があるのだが、その一つに、彼が知的に問題を抱えているということがあった。
 ある日、同じ町で女子高生が殺害される。状況証拠からトジュンが容疑者として逮捕されるが、警察は他の容疑者を捜そうとはせず、トジュンも言動が曖昧。弁護士も妥協案しか提示しない。
 母は無実と信じ、息子を助けるために一人真実を見つけ出そうとする……。
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・切り口
 純粋というと一見良い物のような気がする。
 子供のように純粋な心、と言うと、尊い物のように思える。しかし必ずしもそうではない。純粋と言うことは、ただ物事を知らなかったり、洗練されていなかったりすると言うことでもある。
 子供の頃に認められていたことでも、大人になって同じ事をした場合には必ずしも認められなかったりする。
 その年齢や、身を置く状況に応じて人間というのは色々なことを覚え、物事を処理しなければいけない。自分を律しなければいけない。
 それが不純物になるということでも、そういう成長が求められるのだ。

 この映画では主人公が知的に問題を抱え、子供のような幼さを残す言動をする。そして殺害される女子高生の祖母は認知症にかかっている。
 彼らの言動は、少なくとも映画内で描写される姿を見ると、やはり違和感を覚えるし、不気味さすら感じる。それは一般的に求められる、あるいは一般的な常識を逸した事をするからであり、思考が読めないからである。何をしでかすのかわからないのだ。

 監督が意図しているのかどうかはわからないが、この映画からは、知的に問題を抱える人達に対しての、不気味な者を見る眼差しを感じる。
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・趣向
 映画のジャンルとしてはミステリーなのだろう。
 本にしても映像作品にしても、自分はあまりミステリーを見ないので、そのジャンルの中でどの程度の作品なのかはいまいちわからない。ただ映画を見終わったときに振り返ってみると、うんまあ、良くできているな、とは感じた。
 最初に全て推理の条件が提示されているというわけではなく、どちらかというとだんだん推理の材料が示されていくという感じだが、もしかしたらとても勘のいい人なら、途中でわかってしまうかも知れない。 
 実際にはなかなか難しいかも知れないが、そう思えるほど、一応作品全体としてみると、伏線や条件が回収されているように思える。
 もう半年以上前に見た物なのでぼんやりとした記憶しかないが、ミステリーとしての話の組み立ては良かったし、役者の演技も、演出も、完成度は割と高かったように思う。
 シリアスに、時にユーモアを交え、脚本としては良かったのではないか。
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・個人的感想
 今思い返して感想を書いてみると、結構良い作品だったのかな、と言う気がするが、見た当初はそれほど楽しめた印象がない。不思議なことに。
 ただしきりに誰が犯人か推理はしていた気がするし、のめり込めていたような気はするから、悪い作品ではないと思う。
 ユーモアを交えてはいるが、明るい話ではない。まあ、ミステリーという時点でそうなのかもしれないが。
 この話の核の一つとして貧困がある。ストーリーとして主人公にも女子高生にも大きく関わっているし、生活描写にも貧困が描かれている。苦しい生活感が、そのまま映画の暗く重たい雰囲気にも寄与している。
 ↓一応伏せておきます。反転で出ます。ネタバレ要素大有りです。
 ところで題名が母なる証明なのだが、その通りに彼女は子供のために奔走する。ただそれは、母としてと言うことだけではなく、自らが息子に犯した過ちに突き動かされていた面もあるだろう。そして、真実を知るにつけ、自分が息子を犯罪者にしてしまったという罪の意識にさいなまれるわけだ。知的な問題を生んでしまった点、やられたらやり返せという教え。母として息子を守りたい、だから忘れる、と言うことと同時に、自分自身の過ちも忘れたいのだろう 以上。

 どうでもいいことだけど、濡れ場で(母の濡れ場じゃないよ笑)、しりとりをしながら行為をしている場面があって、印象に残っている。

avenger strikes back

2010年11月10日 音楽
 ブクログの方へ感想を書きました。
 今回の尖閣ビデオ流出事件で、大きく問題は二つある。
 一点は流出の犯罪性や情報管理の甘さなど、流出してしまったことに対する問題意識。
 二点目は、流出が起こった動機に関する問題。今回の尖閣沖衝突事件に対する政府の対応が適切だったのか、国民がどう思っているのかと言うことだ。
 海保に激励が多く届いているという事についての感想を問われた仙石官房長官が、「それは犯罪を称揚することだから同意できない」と返していた。これも一面的にはその通りだと思うが、もう一方で、それだけ国民が今回の政府対応に不満を持っていたと言うことでもある。
 内閣(と一部左翼)としては、問題を前者の犯罪性に向けて、国民の不満と問題点を逸らしたいのだ。
 10年2月18日に観た「つむじ風食堂の夜」の感想を書きます。
 ネタバレがあるかも知れませんので注意。
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・筋
 雪の積もった夜、主人公の「私」がとある食堂に入ると、そこは個性的な常連客達の暖かな空気で満ちていた。二重空間移動装置を売りつけようとする桜田さん、舞台女優の奈々津さん、果物屋や本屋……。
 彼らと接する内に、自分自身を見つめるようになる私は、マジシャンだった父や、父と通ったカフェのタブラさんを思い出す……。
 そんな折、私が昔お話を書いていたということを知った奈々津さんに、一人芝居を書いて欲しいと頼まれたのだが……。
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・切り口
 主人公は人工降雨(?)の研究をしているが、それが一体どういう成果を出しているのか、その研究で何を成そうとしているのかははっきりしない。ただ、”人工的に”事を為そうとしていることは覗える。
 桜田さんの二重空間移動装置というはただの万歩計であって、何気なく日常で歩いた距離の分だけ、遠くに思いを馳せる慰めの物だ。奈々津さんは女優なのだが、女優というのは架空の物語に生きる架空の人物である。仮にノンフィクションを演じたとしても、演じているにすぎない。父はマジシャンだったが、マジックは種も仕掛けもあり、嘘っぱちである。
 このように、この話には虚実が入り交じっている。
 実体が幻像を作り上げる。いや、作るのは人の心である。実体はそこにしかない。そして現象が起こるだけなのだ。
 物事はただありのままにある。それをどう捉えるのか、それによってただの無意味なことも意味を持ち、影響を与えるまでに膨らむ。
 想像、イマジネーションは時に人に恐怖や焦りや不安を呼び起こし増幅させるが、一方で無味乾燥な日常を豊かにするのも、それなのである。
 最後のシーン、父の形見の手袋が風に吹かれて消え去った。
 それをただ風で舞っていっただけと考えるか、父の最後のマジックだと見るのか。
「私」が満面に溢れさせた笑みは、全てを物語っている。 
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・趣向
 原作小説があるらしいが、自分はそれを読んでいないので、どの程度原作通りに作られているのかはわからない。
 内容は割と抽象的だと思う。テーマをストレートには伝えていないように思える。言葉の裏に隠して散りばめ、それとなく感じとらせるような作りだ。まあ、哲学的問答もあるのでそうとも言えないかもしれないが。
 また、決して派手な映画ではない。話に起伏のある映画ではなく、日常の中のちょっとした出来事に主人公が悩んだり右往左往したりする様を、淡々と見ていたり、ゆったりじっくりと描いて見せたりする感じ。テンポはスロー。だったような気がする。
 そういう意味では率直さに欠けるため、何が言いたいんだろうというモヤモヤが続き、間延びしている感さえある。なので、刺激的な楽しさは薄いのかも知れない。
 一方で、美術や照明、あるいはロケ地が、ファンタジックな雰囲気の世界観を作り上げていて、それは見ていて愉しい。
 宮沢賢治っぽいというか。あまり宮沢賢治を読まないのだけど、一言で言うとそんな感じ。
 内容が今一よくわからなくても、雰囲気は味わえるような映画だろう。この映画の雰囲気に浸れる人は楽しめるのかも知れない。

 俳優に関しては大旨違和感なく見られたが、ヒロインの奈々津役の月船さららさんには引っかかった。演技が大仰なのだ。舞台俳優的な。と思っていたら、宝塚歌劇団にて役者をやっていたようだ。通りで。
 舞台女優役なので、ある意味では適役なのかもしれない。が、どうにも自分は、合わなかった。
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・個人的感想
 正直、自分の足りない脳味噌では1回見ただけでは、この映画の趣旨がさっぱりわかりませんでした。だから感想を書くのが非常に億劫だった。
 もういまいち覚えてないのではっきりしたことは言えませんが、テーマがはっきりしていない、どういう話の流れなのか、主人公が何に悩み、どうしたいのかがはっきりしないから、のめり込めないのです。
 そういう話の軸がはっきりしていれば、個々のエピソードにおいて何かを抽出しやすいのだけど、軸がわからないから、個々のエピソードで何を言いたいのか、何をしたいのかもよくわからない。そうやって漫然と進み、こちらが手探りで見つけ出そうとしている間に終わってしまったという感じだった。
 ゆったりしたテンポの作品であり、シーンの演出も淡々としていたりアンニュイだったり。意味があるのか無いのかわからない描写を見せられ続けるのは、個人的には若干苦痛でもあった。
 ただ先に書いたように、雰囲気は非常にある映画なので、全く気に入らないというわけでもなかった。
 でも、個人的にはいまいち。もう一回見れば何か変わるかも?
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・気になったセリフ
「種も仕掛けもありません」

avengers in sci-fi

2010年11月6日 音楽
 ブクログの方へ感想を書きました。
 ブクログの方へ感想を書きました。
 この間の「TVタックル」で、三宅さんを始めその場にいた数名が尖閣諸島沖衝突事件のビデオを「動画サイトに流しちゃえばいいんだよ」と言っていた。
「あ、流れちゃった、でいいんだから」と。
 そして、今日の騒ぎ。関係はあるのだろうか?
 田嶋陽子氏が死刑に反対していて、まあ幾つか理由を挙げていたんだけど、その内の一つに、その人がどうしてそういった凶行に走ったのか考慮されるべきだという点には同意できる部分があった。
 その人の人格・性格形成がどう言った環境下で進んだのか、触れ合った人や思想、文化、風土、遺伝的要因、ありとあらゆる事がその人を作り上げるわけだし、行動に反映されるからだ。
 100%の悪はなかなかない。ヒトラーにも理はあるかという問いに「ある」という答えを出したのは自分も同意できる。
 ただし、死刑は必要だと考える。同情できても許されない大罪を犯した人間や、同情すら出来ない人間、太鼓判を押して世の中に放り出せない人間などには厳罰を与える必要があるのかなと感じる。
 人が人を殺すと言うことになるわけで、殺人と一括りにする人もいるが、一つはっきり違うのは、法治国家の名の下に殺すか否か、ということである。

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 認知症の治療に関する番組を見ていて、生活習慣病が認知症のリスクを高め、生活改善が認知症の抑制に繋がるということを聞いた。
 結構色々な健康問題というのはそういうところにやはり根っこがありそうだ。
 自分もアトピー改善に取り組んできた中で、誤解を恐れずに言えば、「アトピーは生活習慣病だ」という認識を持った。
 適度な食事と運動にプラスアルファで、今は良い状態を持続できている。メンタル面なども重要だが、体をしっかりさせるのは健康への基礎だと思う。
 今の状態から振り返って、昔は良くあんな状態で生活できてたなと思う。
 全然違う。
 冬服どうするかなー。
 昨年、一昨年と冬服に投資をしておいたおかげで、今の所、それほど必要に迫られている感じはしない(もちろん欲しいのはあるんだけど)。
 今年は夏服に投資をした。例年、夏服にはそれほどお金を使わないんだけど、今年は入れ替えや質の向上を図って(自分なりに)結構使った。
 劣化したり気に入らなくなったりしたものを捨てて、かなりすっきしりた。
 おかげで今年の夏は快適に過ごすことが出来た。
 ボトムスも結構揃ってきたし。かなり整備されてきた。

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