7月4日の日記

2009年7月4日 映画
 新世紀エヴァンゲリオン新劇場版・序。だっけ。を見ました。テレビでやっていたので。
 テレビシリーズの頃は、初放映時は確か小学生だったか。中学あたりで社会現象になっていたような気がする。
 あの頃は確かに碇シンジにシンパシーを感じまくりだったような気がする。社会性に目覚め始めた頃だったり学生生活をしていたりということで悩みも多かったのかもしれない。
 が、今見てみるとシンジに共感していた自分が懐かしく思えてしまうのだった。
 当時に比べて神経が多少図太くなったのかもしれない。

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6月26日の日記

2009年6月26日 映画
 レッドクリフパート2にしてもこの間のハゲタカにしても、何だかあまり、ここに書いた感想に納得がいかない。もうちょっと違ったことを書けないものかと、時々思い出してはぼんやりと考えている。

 ハゲタカに関して言えば(ここから先はたぶんネタバレになります)、ブルーウォールパートナーズ代表としてアカマ買収の指揮を執ったリュウ・イーファが、一体何を変化させたのか、と言うことに注目しなければ行けないかもしれない。
 彼は確かに、アカマを強引に買収しようとして様々な人や機関に混乱を起こしたかもしれない。その一方で、アカマは結果的に再生への道へと促されたのだし、彼と関わった人物(派遣工の守山やキャスターの三島)などはそのやり取りに強い影響を受けただろうし、おそらくその後の人生に於いてプラスに作用するのだと思う。
 リュウは、アカマを愛していた。憧れていた。心の底から再生させたいと考えていたのだ。そしてまた、彼は自身の生い立ちや、アメリカ時代に鷲津から受けた言葉(強くなれ)を抱き、飽くなき向上を目指していた。
 その強烈なエネルギーは結果として企業を変え、人を変えた。
 では鷲津はどうか。リュウとの戦いには勝ったが、彼がもたらした物に一体どういう意味があったのだろうか。

 リュウは実は、テレビ版の鷲津と重なり合う人物なのかもしれない。

 鷲津もまた過去に苦悩し、芝野の言葉を胸に挫折から這い上がり、日本に戻って企業を次々買収した。それによって、幸不幸は入り交じっていたが、企業を変え、人を変えていったのだ。
 しかし転機があった。日本での青空電気とのやり取りにおいて挫折を味わい、その過程で銃創を負い、命の危機に見舞われた。彼は助かり、その後、自身の考えややり方を変えていく。そして因縁のあった三島製作所の出来事に、ケリをつけた。

 リュウはどうだったか。彼もまたアカマの買収に成功したと思いきや、鷲津に敗れて苦杯を味わう。挙げ句、強盗に刺される。そして命を落とした。最後にリュウは鷲津に連絡をしたが、鷲津はたまたま会議中で出られなかった。そこが明暗を分けたのかもしれない。
 金と金の間で繰り広げられた悲哀は、ほんの薄紙一枚の差で人の行方を分けた。

 人生には転機がある。挫折を経験し、成長する。リュウが助かっていれば、もしかしたらその後、また違った形で再生の道を歩いていたのかもしれない。
 鷲津もまた、彼から得た物は少なくなかったはずだ。

ハゲタカ。

2009年6月14日 映画
 映画の「ハゲタカ」を見に行きました。個人的な感想としては、ちょっと、色々とタイミングが悪かったかなぁ、と言う気がします。

 日本の象徴とも言えるアカマ自動車は苦境に立たされていた。経営が悪化する中、アカマを狙うファンドの噂が囁かれる。企業再生家としてアカマの役員となっていた芝野は、かつての部下であり、敵、そして盟友の鷲津を訪ねる。鷲津ファンドを率いる鷲津は日本の閉ざされた市場に嫌気が差し海外生活を送っていた。芝野は鷲津にアカマを助けるように依頼する。
 そんなアカマを狙ってリュウ・イーファ率いるファンド「ブルー・ウォール・パートナーズ」が鷲津の帰国とほぼ同時に、TOB、株式公開買い付けを実施。
 正式にホワイトナイトを引き受けた鷲津ファンドは即座にブルーウォールパートナーズを上回る価格で買い付けを実施する。
 しかし予想外の事態が起こる。リュウは鷲津の会見直後に買い付け価格を大幅に引き上げることを表明する。鷲津も対抗するがファンドの資金力を上回る価格を設定されてしまう。
 価格やリュウのパーソナルに対する好感度も手伝い株主はブルーウォールパートナーズへと傾いていく。圧倒的な資金力の前に焦る鷲津は敵の情報を探るが、彼らの裏には中国の影が見え始め……。

 今回の映画はどちらかというと、金に踊らされる人間達の悲哀を描くことに焦点を当てているように思う。そのため、企業やファンド同士の駆け引きによるスピード感、スリル、サスペンス、カタルシスなどは少なめだ。そこを期待している人間が見ると、肩すかしを食うかもしれない。
 確かに状況は刻々と変化するのだが、その間を繋ぐあるいは作り出す平静な場面が若干長い。そのため間延びしているしている感じがしてしまう。全体的に起伏に乏しく、平坦な印象を受ける。
 また、脚本の問題だろうか。どうにも説明不足に感じる箇所があったり、あるいは扱う問題ひとつひとつに時間がかけられず、散漫に感じられる。

 例えばアカマ自動車が低迷しているとか悪化しているとか言うけれども、全くどうしてそうなったのかというのが口で簡単に説明されるだけだし、状況が悪いと言うことを実感させるような画があまり描かれていない。
 日本の状況に嫌気が差したという鷲津にしても同様だ。その後の日本でどううまく行かなかったのかと言うことがいまいちわからない。
 ただでさえ、リュウ・イーファの過去や、行動の背景となる心理などに焦点が当たっているのだから、彼とやり合う立場の人間にも心理的な葛藤の要素を与えるなり、明確にするなりしなければ釣り合いが取れない。
 そこがもう少し描かれていればもう少し映画にも高揚の場面が増えたのではないだろうか。

 テレビシリーズではそう言ったこともしっかりと描かれていた。裏付けがあった上での、その後の展開、行動だったわけだ。

 このハゲタカが映画化に動いているときに、実は昨年のサブプライムローンに端を発したリーマンショック、景気低迷、派遣切りなどが立て続けに起こり、世界の、そして日本の状況が一変した。そしてそれは脚本にも影響を与えたらしい。作っている最中に脚本がどんどん変更されたという。
 映画を見に行く際に、これが悪い方向に影響しなければよいのだがと思っていたのだけど、今回はちょっとマイナスに作用したのかなという気がする。

 扱うテーマを絞りきれず、また個々の心情の変化も練りきれていないように思う。もしこの映画が、この世界同時不況よりも少し前か、あるいは少し後、ある程度安定した状況で大局的に振り返る余裕が出来たときに作られていたならば、もう少し扱う素材に選択と集中を出来ていただろうし、発端、佳境、そしてその先への道筋を描きやすかったと思う。

 全くつまらなかったわけではないが、ちょっと個人的には残念だった。

 リュウ・イーファ役の玉山鉄二さんや派遣工役の高良健吾さんの演技は素晴らしかったと思う。またアカマの社長役、遠藤憲一さんも風格があったし、個人的には鷲津の部下役の志賀廣太郎さんの低音が。好きなんだよなあ。
 この映画には低音に魅力のある役者が続々出演しますが、個人的には断然志賀廣太郎さん。
・放送文化基金賞でNHKスペシャルの、
「解かれた封印~米軍カメラマンが見たNAGASAKI~」が本賞を受賞したと新聞に載っていた。
 これは自分も昨年見ていて(8月の放送だった)、一度目で深く印象に残り、再放送を録画したドキュメンタリーだ。

 米国人カメラマンが占領軍として長崎にやってきた。彼は、軍に隠れてその当時の長崎の風景や人物を撮影していく。帰国後、彼はその写真と記憶を封印し、家庭を持ち、仕事をしながら平穏な暮らしを続けていた。
 ところが晩年、突然に彼はその封印を解いた。そして、原爆投下という悪夢を告発していく。しかし母国を告発するという行為は周囲の人間からの非難を呼び込むことになる(事にアメリカは原爆投下を正当化して教育しているし、愛国心も強い)。
 平和だった家庭は崩壊し、彼は理解を得られないまま人生を没する。

 彼は長崎で何を見たのか。長崎での体験は彼の中でどのような意味を持っていたのか。そして、晩年の彼にどのような心境の変化があったのか。
 ということが彼の撮影した写真や、決意を吹き込んだ録音テープと共に語られていく。

 彼の意志を継いだのは、彼の息子だった。父の行動を引き継ぎ、活動している。
 父の思いの全てを理解は出来なかったと思うが、それでもわかろうとした。非難が集まる中、新聞の投書に父を擁護する文章を送った。その事を録音テープの父が語る場面で、涙ぐんだ場面が印象に残る。

 以前はほとんど理解を得られなかったが、最近反応が変わってきたと息子は語る。共感する意見が、徐々に見られ始めるようになったという。中には、イラク戦争に絡んだものもあった。
 また、写真に衝撃を受ける人もいた。中でも、瓦礫の中に、直立で佇む少年の写真に惹きつけられたという意見があった。

 この番組の中で色々と感じる箇所はあったが、自分もその少年の写真に一番惹かれた。唇を真一文字に結び、眉をひそめて、遠くを見るように直立した少年。背中には天を仰ぐように崩れた少女が背負われている。その姿勢の美しさと、もの悲しさは、得も言われぬ風情を醸していた。
(また余談ながら齋藤孝の「身体感覚を取り戻す」という本を今読んでいるのだけど、その中で昭和の少年にはまだ日本独自の身体文化が引き継がれていたという主張が出て来る。この写真を見ているとまさにその立ち姿の美しさに日本の身体文化を感じることが出来た)

 原爆投下直後の中、カメラマンとしてやってきたその男性は様々な惨状を目にした。彼を突き動かしたものはまさにそれだろう。そのリアリティや催す感情は、なかなか体験しなければ伝わるものではないし、理解もされない。ましてや、フィルターのかかった教育や、遠隔地からの客観的、合理的な見方では。
 現実を目にしたときに、それら全てを吹き飛ばしてしまう衝撃というものがある。まさに事件は現場で起きているのだ。
 彼の写真は大変意義のあるものだった。自身の感情を伝えるのに大きく役立つだけでなく、人に様々な気持ちを喚起させる要素があった。
 偏った価値観が多くを占める中に、こういった写真と彼の活動は、ほんの小さな、それでも大変貴重な穴を削ってくれる。その事が、本当の平和について考える、大きな材料になっていくのだ。

(また、この話は何だかフランダースの犬に似ている。正直に、真摯に生きようとした人間が理解されず、苦境の中に没する。が、やがて彼は、周囲に理解されていく。例え敗北したとしても、しっかりとした信義に生きて死んだのならば、そこに崇高な価値を見いだす。日本人好みの、滅びの美学。このドキュメンタリーが評価された理由の一端かもしれない)

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・ツレがうつになりまして
 NHKがドラマ化。原作の漫画本を持っているのでどのように映像化されるのかと思って見てみました。まずまず良かったです。藤原紀香(最初起用に驚いたけど)の雰囲気も原田泰造の演技も。
 またツレの神経質な性格を知らせるための描写だとか貂さんのいい加減でしかも愚痴っぽい感じとか、色々必要な情報、伏線は入っていると思います。
 きっちり頭から見ていないので何とも言えませんが、ウツに陥っていく会社での出来事などもう少し欲しかったかな、と言う印象。まあこれはいいか。
 ツレのシグナルとそれに気づけていなかったことがわかる終盤付近や、全く誇れるところがない自分に気づくあたりの、落ちきった部分がハイライト。か。
 ここに条件が揃った。ここからどう再生していくのか、と言うのが今後の見せどころ。
 漫画だとゆる~い描写で、自分はそれしか読んでいない。しかしその他の関連書ではもっと深刻だったことが書かれているらしい。実際ドラマでも、なんとなくそれが覗える。
 総合的に取り入れていくんだろうけど、どれをベースにするのか気になるところ。やはり原作漫画だろうか。となると、次回以降、あのゆる~い、茶化した感じをどう出していくのか気になる。

5月10日の日記

2009年5月10日 映画
 映画を観てきました。「レッドクリフパートツー」。
 大地丙太郎監督が面白いみたいな事をブログに書いていたのでちょっと期待していたのですが、自分には合いませんでした。ということは、監督がまあまあと言っていた「スラムドッグ・ミリオネア」はたぶんきっと肌に合うのだろうなと思う。
 監督はダニー・ボイル。絶対合う。

 映画を成立させるための伏線や人物の言動の動機、あるいはキャラクターの魅力や、描きたい人物像を表す映像はきちんと入っていました。きちんと入りすぎていたせいか、上映時間がちょっと自分には長く感じられました。
 繊細な心情や感性、様式美を表す映像がその中に含まれていて、それが間を作り出したり心象に作用してくるのだろうけど、自分には若干それらが冗長に感じられました。
 その部分だけでなく、とにかく全体的にテンポやメリハリがいまいちだった気がしました。
 扱うテーマがテーマなだけになかなか難しいのかもしれません。伝えたいメッセージの事を考えると、簡単に切ることは出来ない部分もあるのかもしれませんが。
 全体的に、孔明の飄々とした雰囲気のように、緊迫感に欠けているようでした。

 ハリウッドのように合理的でエンターテイニングで、と言う場合は、上映時間をなるべく2時間程度で収めようとするし、楽しんで貰うために流れの緩急やテンポに気を遣います。そのせいで表現が淡泊になったり話が無理矢理になってしまうという弊害があるわけですが。

 自分は三国志をあまりよく知りません。昔小学生だった頃毎月買っていた雑誌に連載されていたくらいです。
 赤壁の戦いは知っていますが、詳細は知りません。

 こういう有名で、史実として皆に知れ渡っている映画というのは結局、そういったファンや、ファンでなくとも知っている人達に対して、どのように見せるのかが重要です。
 孔明や周瑜など、有名な登場人物の活躍を魅せたいのか、話の有名なエピソードをどういう風に見せつけるのか。ファンであれば、そこにカタルシスを見いだすことも出来るのかもしれません。
 実際、ゲームの三国無双のように、一騎当千とは言いませんが、彼らの活躍は十分描かれているとは思いますし、個々の(戦闘シーンを含めた)エピソードにしても(詳しくないので何とも言えませんが)ちゃんと魅せているのだと思います。

 ただあまりそういった歴史上の人物や、三国志自体に思い入れのない自分は、どうにも感情移入できませんでした。
 また、争いの無意味さや、大きな戦争の中の個々人も描かれてはいますが、自分には、プライベートライアンの時のような強い衝撃は得られませんでした。 

 一方で、純粋に、単純に、異国の、違う文化での集団戦闘の様式、方式、道具やその使い方など、そういった面での面白さは感じました。

宇宙戦争 [DVD]

2009年4月11日 映画
 テレビでやっていたので観ました。ノーカットかどうかはわかりません。ネタバレ的な物もあるかもしれませんので注意してください。


 この映画は一言で言ってしまえば、ロードムービーなのだと思う。問題を抱えた人間が、旅を経て成長していく物語だ。

 最初の方少し見逃してしまったのでハッキリとはわからないのですが、主人公の正確には難があり、子供や配偶者との間に溝があるらしい。妻とは離れて暮らし(別れている?)、息子は自分に対抗心を持ち(帽子がそれぞれヤンキースとレッドソックスという点で表れている)、娘は情緒不安定。
 家族という絆が捻れ、断ち切れ、綻びているところから話は始まる。
 そこにエイリアンの巨大兵器が現れ、主人公は子供を連れて逃げまどう。行き先は母の待つ町だ。しかしその道中、命の危機に見舞われた人々との争いがあり、圧倒的な戦力の前に無力な人間の姿を見せつけられる。息子との別れやエイリアンからの逃避、戦いがあり、主人公は妻のいる町へとたどり着く。そこでひょんな事からエイリアンは倒れ、人間は助かるのだということがわかる。
 ラストシーンでは、綺麗な町並みに妻、息子、娘、皆が集まり、笑顔で終わる。

 主人公はこの映画に於いてヒーローではない。ただの一般市民だ。突如現れた謎の巨大兵器が街を破壊し、人を殺していく。彼はその中で子供を連れて逃げまどう、多くの人間の一人でしかない。普通のヒーロー映画で言えば、無慈悲に殺されていく大勢のエキストラの役回りだ。
  エイリアンから人間を守る戦いはまったく主人公と関係のないところで行われている。彼らはただ無様にも逃げまどうだけなのだ。

 しかしそんな中で、主人公は子供達との間に絆を見いだしていく。子供達は自我を確立し始め、皆自分自身の意識に変化が生じていくのだ。

 世界中が阿鼻叫喚の破壊と殺戮に見舞われた中で、最後の場面をご都合主義だと言えばまさにその通りだと言える。しかし、この映画に於いてそんな批判をすることはナンセンスなのだ。 
 この映画はロードムービーだ。成長の物語なのだ。成長の帰結、強まった家族の絆、その有様である最後の場面がまさにこの映画のゴールと言えるのではないか。

 エイリアンの侵攻という大がかりな題材を用いた、人間の成長ドラマ。一種のメタファー。それがこの映画の本質だろう。

(余談だが、息子のエピソードはイニシエーションなのだろうなぁ)

8月23日の日記

2007年8月23日 映画
連日に渡って複数の映画をメモしながら観ていると、
やっぱりひとつひとつに対して注意力が減ってしまう。
「叫」「チルソクの夏」「陽はまた昇る」「青の炎」「GO」「麦の穂をゆらす風」
を観た。
あー、何も考えずに観られる映画を観たい。

黒沢清監督の作品は「叫」「アカルイミライ」「ドッペルゲンガー」「回路」「カリスマ」「CURE」を観たのかな。
「LOFT」も観よう。
この監督の作品は全カット、全セリフに何か意味というかメッセージというか、意図というか、そういう物がありそうで気が抜けない。
他の監督さんの作品もそうなんだろうけど、この人の映画を観ていると特にそう感じてしまう。
監督の意図やメッセージが登場人物の行動やセリフに現れていて、
時にそれが抽象的というか、現実的には理解が難しいような事だったりするので、
それが難解さを生んでしまう。わけのわからなさに繋がってしまう。
説明もあまりない。
ただ今回は多少説明が入っているけれども、それでもやっぱり、ちょっと。

「チルソクの夏」
細かい部分は置いておいて、基本的には良い映画だと思う。
でも、どちらか一方が努力してもどうにもならないことって、あるやん?
国レベルの問題で。

「陽はまた昇る」
佐々部監督の初監督作品。
これも基本的に、お話はよい映画。感動する。
ただ、カット、シーンの繋ぎがいまいちバラバラという感じがしなくもない。
「叫」を観た後だったからよりそう感じたかもしれない。
「叫」や「青の炎」はとても効率が良いというか、繋ぎ方に違和感がないし観やすい。
この映画はちょっとまとまりを欠いていたような気がする。

「青の炎」
これは、もう一度観てみないとなんとも。
感情は揺さぶられたけど、自分の中で答えは出ていない。
松浦亜弥は、本来の自分の性格と真逆であろう役だし、演技の経験もそれほど無かっただろうし、難しい役だったし、ということで、あれが精一杯だろうなぁ。

「GO」
文句なしで面白い映画。

「麦の穂をゆらす風」
1920年アイルランド。
イギリスからの完全独立を目指す義勇軍を中心とした話。
支配関係の描写や拷問、独立を目指す動きの中での衝突や悲しみ、
その後の、理想や方法の捻れなどが描かれる。

8月19日の日記

2007年8月19日 映画
8月19日の日記
←ジャンケンでマッドハンドに負けるトロ(床の汚れが気になる)

(映画感想、全体的にネタバレ風味)

「マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選」
2004年アメリカ大統領選直前にマイケル・ムーアがとある大学に招かれて講演をすることになった。
しかしその事が大問題となる。なぜならそのユタ州の町は保守的な人間の集まる超保守的な町だったからだ。
ブッシュ批判で知られるリベラルなマイケル・ムーアがやってくることなど、到底許せないことなのだ。
大学内で講演中止を求める運動が起こる一方、マイケル・ムーアの招待を肯定する学生達とに二分され、活発に議論される。
やがて地域やメディアを巻き込んだ一大騒動へと変貌を遂げ、訴訟沙汰にまでなってしまう。
果たして講演の行方と、大統領選はどうなるのか……?

この映画はドキュメンタリーで、大学を中心とした騒動を映し出している。
マイケル・ムーアは最後の講演に出て来るだけで、あとはずっと肯定派と反対派の争いを追っている。
ドキュメンタリーと言っても、編集されているし、一つの作品である以上そこには制作者の意図があり、それに沿って作られている。
つまり完全にありのままというわけではない。演出もある。
この作品に出て来る人の言葉を借りれば、フィルムを通してしか見ていないわけだ。
その点で、作品を見ている最中も、見終わった後も、慎重に判断をしなければいけない。
しかしながら、実際に起こった出来事をフィルムに収めている以上、
そこには確実に真実や、一側面が映っている。
そこから得られることも大いにあると思う。

この作品には色々な意見を持った人が登場するが、大切なのはそういった人達の意見をきちんと聞くことで、偏見ではねつけるのはよくない。
というだけなら簡単なんだろうけど、それが難しい。人はどうしても「バカの壁」を持ってしまう。
この映画の保守派の頑なに閉ざされ反発する姿はまさにそうだ。
どこの国の人間もそうだが、あらゆる情報を見極めて、本当に大切なことは何かということを判断していかなければいけない。
プロパガンダはすぐそこで手を振っている。

「ホリデイ」
自分にしては珍しくガチの恋愛物を観た。
というのもジャック・ブラックが出ていたので。「スクール・オブ・ロック」での怪演で気になってしまった。
あと、メグ・ライアンが出ているとそれだけでちょっと面白そうと思ってしまう。
パッケージデザインも好きです。

イギリスとアメリカの傷心女性二人が気分転換に長期の休暇を取ってお互いの家を交換ステイする。
新しい環境で新しい出会いとしがらみに挟まれながら変化する男女四人の物語。

まあ、自分はあんまり(経験もないし)恋愛物で感動しない性質で、共感云々もあまりないのですが、全体的にハッピーで、陰と言うよりは陽で、元気が出る映画でした。
主人公達が自分たちの負の部分を克服していく終わり方も後味が良いし、
気分が落ち込んだ時に、多少は薬になると思います。

「善き人のためのソナタ」

1984年、東ドイツが舞台。
反体制の疑いをかけられた劇作家とその周辺、その監視を命じられた国家保安省の男を中心として、社会主義体制の醜い構造や人間ドラマを描く。

この映画は見終わった後、余韻が長く続いた。
素晴らしいと思う。二時間強の上映時間だけど、それほど長くは感じなかった。
色々と考えさせられる映画。

これは自分の勝手な解釈ですが、監視員の男はとても誠実な人間なのだと思う。それゆえに体制に厳格で忠実で、それゆえに醜悪な体制に追い詰められる劇作家達を守りたいと考えたのではないか。
監視員を演じた俳優がとてもいいんだ。素晴らしい。
最後、手紙開封作業のシーンから本屋の中での終わりのセリフまでの姿、佇まい、表情が最高に素晴らしい。

最後の最後に集約されるというか、あれを見たらそれまでのことが甦って、涙が自然と出てきます。
いやあ、もう一度また今度観たいかも。
DVD ジェネオン エンタテインメント 2007/03/21 ¥3,990

(ネタバレ有り)

アフガニスタン国境付近で「セプテンバーテープ」が見つかり、それを北部同盟から手に入れた会社(報道?映画?)が編集して公開した。
内容はアメリカ人と、通訳のアフガン系アメリカ人、カメラマンなど3人によるアフガン周辺でのオサマビンラディンを追ったドキュメンタリー。
なお現在も提出を求めたアメリカ国防総省に8時間分のテープが押収されたままである。

という感じで、映画の最初から最後までテープの内容が流される。
作りは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出していただければわかりやすい。

これを何も知らない人に「ノンフィクションのドキュメンタリーだよ」
と伝えて見せたら、たぶん「そうなのか」とそのまま信じてしまうのではないか。
そう思わせるくらい、作りはかなりリアルだ。
実際公式ページによると、映っている銃弾やミサイルは全部本物らしい。
それだけではなく、本当に半分ドキュメント形式での撮影だとか。

自分はそこら辺、曖昧な情報しか持っていなかったのだけど、
見ていて最初は実際の出来事だと思っていた。
途中から、何か作り物っぽい感じがしてきて、でも最後まで確信は持てなかった。

ともあれ、本当に銃撃シーンや銃撃戦(ロケットも飛んでくる!)は、
かなり迫力があった。
画面の前で何回銃弾を避けようとしてしまったことか。
あの地域の治安の悪さ、危険さも十分伝わってくる。

メンバーの中心人物であるアメリカ人は、テロリストが悪い、ビンラディンが悪いと主張する(理由はあるのだけど)。
アフガン系アメリカ人の通訳は、思いつきのテロではないと養護する。
テロリストは、テロの責任はアメリカにあると言う。
石油が欲しいアメリカと、解放を目指すテロリスト達の要求はかけ離れているなど、
何が正しいか、それははっきりした答えを出していない。

ただこういった世界を見ていると、日本の平和などはどうにも他国の不幸の上に成り立っているのではないかということを思ってしまう。
関心がなさ過ぎるというか。
関心があっても、何かできるというわけではないだろうけど、
知らないことが罪なのでは、とか。
でも本当に、関心がない人はめんどくさいとか言いそうだなぁ。
エウレカセブンでのユルゲンスのセリフを思い出す。
「テレビで報道されなければそんな事実は無いと思いこむのが人間だ」

(ビンラディンを殺せる機会があったのに、アメリカが手ぬるい為にビンラディンを逃がしてしまった。俺の言っている意味がわかるか? というセリフなど、チラッと重要っぽい言葉が出てきたりする。撮影したうちの押収されているテープが本当にあるなら、かなり見てみたい)
DVD ハピネット・ピクチャーズ 2007/01/26 ¥3,990

韓国映画の「春の日のクマはすきですか?」を借りて鑑賞しました。
もちろんペ・ドゥナ目当てです。
少しのネタバレでも嫌な方は注意。

一時間半程の映画なのですが、前半から中盤まではコメディー色が強く、
後半からは恋愛部分に本腰を入れ始める感じ。
個人的にはコメディータッチで進む中盤までが面白かったのですが、
後半だんだんシリアス(?)に、というか、
クサくて真面目な展開になっていくのが合いませんでした。
何か韓国の方は好きなのかもしれませんが、
わざとなのかナチュラルでああなるのか、
昔のドラマのような感じの部分もあって、うーん、と。
主人公の女性のおかしなキャラと、全体の喜劇的着色があれば、
あれはあれで自分はいけると思うのですが、
どうしても真面目にやられるとダメです。
そういう意味で中盤までは、楽しめたんですが。

で、一つ何となく分かったような気がした部分がありました。
まああくまでこちらの勝手な解釈なんですが。
セカチューがあっちで映画化されたり、韓国の方は悲恋のようなものが好みっぽいのですが、つまりそれは、耐える悲しみ、悲しみや寂しさを積み重ねた年月を思って、じわじわとこみ上げる感情・感覚が好きなのかも、とか。

で、ペ・ドゥナですが、もう最高でした。
彼女の表情は、素晴らしすぎる。
こんな事書くと不純な感じがしてあれですが、でも、だって、

可愛いんだもん。

しょうがないですよ。あのころころと変わる表情。
表情や仕草の表現力が並外れている。
今回の彼女の演技を観られただけでもう、この映画を観た甲斐がありました。

映画全体の評価としては、後半の展開が自分の中で大きなマイナス要素になってしまって、いまいちですが。
登場する人物達の魅力は、あるんですけどね。
図書館の職員とか。

13デイズ

2006年9月2日 映画
DVD ポニーキャニオン 2006/07/19 ¥2,625

(ネタバレあり。注意)

1962年のキューバ危機を描いた作品。

ある日アメリカの偵察機がとらえたキューバの写真。
そこにはミサイル基地開発中と思われる状況が写されていた。
ソ連から中長距離ミサイルや核弾頭が運び込まれているという情報が入り、
ミサイル基地が完成すればアメリカにとって大きな脅威になるのは間違いなかった。
刻々と時間が過ぎる中、ホワイトハウスは対応に追われ、
ケネディ大統領には、難しい決断が迫られた……。

二時間二十分ほど上映時間で、結構長めな映画なんだけど、
とにかく最初っから最後まで密度が濃い。
たぶん映画館で一回観ただけじゃ、自分の場合は全部は理解できなかったと思います。
というか今もちょっと上手く思い出せないんですけどね(苦笑
しかし全体からはピリピリと張り詰めたものが伝わってきて、
キューバ危機をいまいち深く知らないということもあるのでしょうが、
サスペンスとしての緊迫感は十分感じられました。

キューバ危機ということで、問題になっている場所はキューバなんですが、
実質アメリカとソ連の間の問題ですね。
この話は対ソと平行してホワイトハウス内の戦いも描いている。
つまり軍部であったり、対応を左右する意見の違いであったり。

一歩間違えば核戦争へと突入してしまうという極度のプレッシャーと戦いながら二重の駆け引きを要求され、選択していく大統領達の苦悩が表現されていて、面白かったです。

もちろん全て鵜呑みにしていいのかはわかりませんけどね。
これは二度、三度と見返さないと、自分にはちょっと細部まではわかりません。
幸い、結構面白い作品なので、いつか観てみようと思います。

(そういえばどの案を選択すればいいのか悩む一連の部分は、将棋を経験している身としては少しわかるような気もした。どの手が最善なのか考えれば考えるほど深みにはまっていく感じとか)
DVD ビデオメーカー 2005/05/27 ¥3,990

(ネタバレあり。注意)

モーターサイクル・ダイアリーズと合わせてみました。
モーター〜と比べると、映像的に少々安っぽい感じがする。
ゲバラ役はモーターと一緒で、ガエル・ガルシア・ベルナルさん。

この映画なんだけど、おそらく史実を時間軸になぞったノンフィクション形式の作品です。
カストロの視点で進み、ゲバラは中盤あたりから出てきますが、
タイトルに名前が出るほどの存在感は無かったように思います。
キューバ独立、そしてその後というように、史実を追う形なので、
人間ドラマという部分においては薄くなっています。
個人的には、まあ、キューバ革命の道筋だけでもそれなりに楽しめましたけどね。

物語ですが、アメリカに搾取され、アメリカの傀儡であるキューバ政府を打倒するためカストロが立ち上がります。
作戦が失敗したりして投獄されたりしますが、メキシコでゲバラと合い、
キューバの革命のために共に歩み始めます。
戦いは苦戦を強いられますが、次第に農民達の協力を得たりしながら戦力を増強し、戦線を拡大。各地で勝利を収めていきます。
そしてついに独立を勝ち取るのですが、その後雲行きが怪しくなっていきます。
いつアメリカにつけ込まれて革命がおシャカになるかわからないという恐怖から、次第に政治が独裁色を帯びていきます。
当初は資本主義でも社会主義でもない新しい国にすると打ち出しておきながら、結局社会主義体制になっていきます。
ゲバラはさらに南米の各地で革命を起こすためにキューバを去りますが、67年にアメリカによって射殺されます。
経済的にも行き詰まり、亡命が後を絶たず、カストロと共に戦った主要な人物の末路もあまり明るいものではない、という中、カストロの老いた歩みと憂いに満ちた表情で終わります。

ああやはり、戦いで手に入れた権力というのは、その後の政治の部分でつまずくのだな、というのが、見終えてからの第一の感想です。
特に搾取される層が圧倒的な国というのは、革命や、革命後が難しいのだな、と。

で、Amazonを見てみたらですね、物凄い批判の嵐。
まあ読んでいただければわかると思いますが、今現在のキューバは決してそんなに貧しい暮らしでもないし、作り方が偏っている、らしいのです。
アメリカ制作ですから、イデオロギーの違いもあるのでしょうが、
いやあ、怖い怖い。
これを読まなかったら映画の暗いイメージを鵜呑みにしてましたからね。
危ないところでした。
改めて「モーターサイクル・ダイアリーズ」の大切さを実感しました(笑
で、しかも、元々3時間半近くあるのを、切って切って二時間に収めたというのも、なんだか残念でならない。

ジョニーボーイの「YOU ARE THE GENERATION THAT BOUGHT MORE SHOES AND YOU GET WHAT YOU DESERVE」という曲でも書かれているように、我々は我々が日頃享受している豊かさの中に、実はこうした貧困に苦しんでいる人達の犠牲に近い生活があるのだということを知らなければいけない。
それはとても、見つけにくいのだとは思うけど。

さて、セリフで印象に残ったのは、
「まずは僕の革命、次は君のだ」というカストロの言葉と、
「撃てよ。人が一人死ぬだけだ」というゲバラの最期の言葉。

あと、この作品を観て、キューバ危機にも興味を持ったので、
「13デイズ」も観てみようと思います。
(モーターサイクル・ダイアリーズを観ていると、ゲバラの過去がわかるので、彼に対する理解が多少違ってくると思います。と同時に、敵を銃で撃ち抜いていく姿にちょっとしたショックも覚えます)
DVD アミューズソフトエンタテインメント 2005/05/27 ¥3,990

(ネタバレあり。注意)

チェ・ゲバラ。
キューバ革命において重要な位置に立った彼の、
革命家として生きる事になるバックボーンを描くと同時に、
友人との二人旅を通した素晴らしい青春映画となっている。
とても良質な作品です。

黒沢清監督の「アカルイミライ」という作品で、
少年達がチェ・ゲバラのTシャツを着て闊歩しているシーンが最後にある。
その顔写真がチェ・ゲバラだと知るのは少し経ってからですが。
知ってからは、一体革命家チェ・ゲバラとはどんな人なのか、
という思いはありました。

チェ・ゲバラという人は、作品でも描かれていますが、
とても真面目で正直で、それが時として人になんと言われようと押し通す頑固さ、頑なさになります。
途中でバイクが壊れた影響もあって、ゲバラ達は南米の道行く人達と交流を深くすることになり、その生活の実情などを肌で感じていくことになります。
旅を通してゲバラの中で確実に何かが変化し、革命家としての道を歩ませたのです。

知識としてゲバラのことは全然知りませんが、
この映画だけで判断すれば、確かにとても素晴らしい、
人間としての魅力に溢れた人だと言える。
物事に実際に触れ、目に観て感じることの大切さを思い知らされます。

ロードムービーと言うこともあるし、ゲバラの旅の日記ということもあるし、
取り立てて大事件があるわけではない。
しかし全編を通して変化していく二人や、風景など、
心を揺さぶる何かがあります。
時には静かな景色を歩く二人を見ていると、なぜかこちらが焦燥を覚えたり。

チェ・ゲバラということを抜きにしても、
とても良い映画だと思います。

(ちなみに、「チェ・ゲバラ&カストロ」という作品と合わせて観ました)
(あと、主役二人とも良かったのですが、特にゲバラ役のガエル・ガルシア・ベルナルさんは良かったです)
DVD 角川エンタテインメント 2006/08/11 ¥3,990

(ネタバレあり。注意)

イヤー、好きなんですよ。
ウォレスとグルミット。
大好き。
むかしNHKで過去のシリーズが放送されてまして、
それが面白くて、それ以来ファンなんです。
この作品も無茶苦茶面白かったです。
別にファンだから色眼鏡をかけて……いる部分もちょっとは、
そりゃあありますけど、
でもやっぱり本当に面白かったんですよ。
素晴らしいエンターテインメントでした。
普段洋画は字幕で観るんですけど、
やっぱりこの映画だけは吹き替えでしょう。
ウォレスの声は欽ちゃんのあの声じゃないと。

物語は、巨大野菜コンテストに向けて心血注ぐ町の人達を、ウサギの被害から守るために、ウォレスとグルミットがウサギ捕獲業者となって成果を上げている場面から始まる。
捕獲したウサギが多くなり、収容場所も一杯になりつつある中、
ある時ウォレスは思いつく。そもそも、ウサギが野菜嫌いになれば、
話は早いのではないか。
そこで既に開発していた脳波に影響を与える機械を使うことにしたのだが、
まあ、ウォレスだし、当然トラブルが起こるわけで……。

映画は「ザ・フライ」や「狼男」、「キングコング」などのパロディーを散りばめながら、停滞なく、次々と展開を起こしていく。
上映時間はアニメだし(しかもクレイアニメだし)一時間半ほどですが、
中身は濃密で、極上のエンターテインメントとなっています。
笑ったりハラハラドキドキしたり、少しだけほろりときたり。
ボクは彼らを観ると幸せになれるのです。
ウサギも可愛かった。
グルミットの、表情だけで語る心情が何とも言えず素晴らしい。

楽しい一時を味わいたいのなら、迷わずこれをお勧めします。
DVD ジェネオン エンタテインメント 2000/04/28 ¥4,935

(ネタバレあり。注意)

ようやく観れた。
前々から観たいと思っていたんだよね。
この間ようやく観ました。

学生達三人がドキュメンタリー映画を撮影するために
魔女伝説が残る森へと出かける。
しかし彼らは失踪し、一年後、フィルムだけが発見される。
我々が観ているのは、彼らのフィルムを編集したものである。

という設定。
つまり、この映画は、彼らの所持していたビデオ二つ(カラーとモノクロ)におさめられている、断片的な映像を繋ぎ合わせたものなのです。
初めてキャンプをして夜が明けた朝、登場人物の一人(二人だったっけ?)が、夜中に何か変な、女性の高い笑い声を聞いたと語るシーンがあるように、カメラがオフになっている状態の事はわからない。
あくまでこちらは残されたフィルムを傍観するという立場なのです。
(まあ、どういったシーンをオン状態として映像に組み込むかは制作者次第だし、そこは普通の映画とあまり変わらないか。基本的に重要な部分はほとんど入っていたしね)
この映画は超低予算だし、下手に安っぽいクリーチャーを出したり、メジャー映画のような恐怖演出をしようとすると、かえってチープさを露骨にしてしまう恐れがある。
だから逆に、素人がドキュメンタリーを撮影しようとして、姿の見えない何かに見張られている、追いかけられている、というスタイルを取り、心理的な恐怖に傾けて撮影したのは、成功だったといえる。

物語は最初撮影に向かう三人が合流していくシーンから始まり、
地元の人へのインタビュー、宿泊を経て、森へと入っていく。
撮影を済ませて帰宅するはずだったのが、なかなか森を抜けられない一行は、最初一回だった予定のキャンプを、二回、三回と強いられる。
地図をもって仲間を導いていた女性メンバーは迷っていないと繰り返し、仲間との口論も日を追うごとに激しくなっていく(女性に地図をもたせたのがまず問題だったとも言えるが)。
食糧も尽き、疲れ果て、感情が荒れていくメンバー。
しかも彼らにとって恐怖だったのが、毎夜訪れる、謎の怪奇現象だった……。

この映画はAmazonのレビューを見てもわかるとおり、賛否両論、真っ二つです。
わかります。この映画は向かない人にはほんとに向かない。
しかし自分は楽しめました。

先述したとおり、カメラのオン状態でしかこの物語の出来事を知れない。
しかも、メンバー全員が、謎の失踪をしてしまっているのです。
事件の核心など細部が詳細に説明されませんから、
その部分を想像で補えるかどうかが、この映画の評価の大きな分かれ目になってきます。
恐怖と面白さがイコールで繋がっているのです。

迷って全くどこにいるのかわからない森の中で、
食料もなく、毎夜得体の知れない何かが自分たちに確実に近づいてきて、
影響してくる。
一日中同じ方角を歩き続けても、なぜか夕方には同じ場所に辿り着いてしまう恐怖。
自分なんか、途中からは、メンバーにさえ疑心暗鬼になってしまっていました。
そして最後のクライマックス。
想像力を刺激されて、見終わった後はしばらく動けませんでした。

直接的な、インパクトのある怖さを求めている方には、向かないと思います。

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エミリー・ローズのところでも書きましたが、「午前三時」。
キリストが死んだ時間ともっとも離れた時間で、悪魔が活動を盛んにする。
この映画では夜中に変な声で目が覚めて、「頼む、4時か5時であってくれ」というセリフもむなしく、「畜生、三時だ」「ジーザス!」というやりとりがあって、
早く日の光が出てほしいという闇への恐怖と同時に、
そういったキリスト教圏の背景も感じられて面白かった。
DVD 角川エンタテインメント 2006/02/03 ¥4,935

(ネタバレあり、注意)

テレビで放映されたものを観た。
その限りだと、時間を無駄にしたな、という印象。
途中から眠たくなってきてねー。
神木君くらいしか印象に残りませんでした。
そもそもが子供向け作品だからでしょうが、
しかし子供だって、ただ楽しいだけじゃなくて、
心に訴えかけるような作品を見ると、
その時はよくわからないかも知れないが、
後々に少なくない影響を受けていたりするものです。
この作品は、そういう意味では少し足りないような気がする。

ただし、ものをすぐゴミにすることについて警告している点については、
多少提言もあるが、まあ言っておいてもいいとは思う。
母親の小言と一緒で、耳につくし言い返したくなるけど、
決して的外れじゃないし、問題点を気付かせてくれているという意味で、
必要なのかも知れない。
人間というのは忘れやすいから、そういうことを一々言ってもらった方が、
大人になっても頭の中に残りやすいのかも。
そうして環境に配慮した製品作りや部品の循環が進めば、
まあ、良いことなんじゃないかな。
DVD 東映 2006/08/04 ¥3,990

(ネタバレ注意)

「ローレライ」「戦国自衛隊1549」「亡国のイージス」と、
終戦60周年に合わせて制作された戦争物、軍事物の大取りとして満を持しての大和。

個人的にはまあまあでした。
悪くはない。
でも、物凄く良かったわけでもない。
それなりに楽しめました。

ただ、物語大きな流れが、ナレーションによる解説によって進むのが気になります。
そこの部分を登場人物によるものにするだけで、随分と違ったように思うのですが。
特定の人物の視点にしたくはなかったのでしょうか。
「男たちの」大和、だから?
あるいは、客観的な事実として入れたかったのか。

戦争の悲惨さを伝えるのに重要である個人個人の背景は、
無茶苦茶な感動はないが、じんわりくるものがある。
戦闘部分では容赦なく撃ち抜かれる兵士達の鮮血が壁や床に飛び散る。
仲間の飛沫に顔を汚し、怯えながらも弾丸を補充する姿や、
銃創に口を歪めつつ、勇猛に振る舞う戦士達が胸にくる。

戦争が薄れて久しく、「俺だったら上手くやる」みたいな、
戦争をゲーム感覚で考えるような若い人間には、
こういう風に、ほとんど運でしか生き残れない実際の戦場を観ることは、
少なからず影響を与えると思う。
出来れば原爆投下の場面もしっかりと入れてほしかった。
個人的な要望ですが。
戦争はダメだ、ということをよりリアルに掴んだ後、
出来れば戦争前後の知識も養っていただきたい(俺もあんまり知らないけど)。
そこはほんとは、学校で教わらなきゃいけないはずなんだけどね。

セリフで印象に残ったのは、曖昧ですが、死にに行く意味を問われて、
「負けて目覚める。それより他に日本の取るべき道はない。目覚める日本の礎となって散る。本望じゃないか」
という感じのものと、
ミスした者が名乗りを上げず、連帯責任になりそうになったところで挙手した者に、仲間が後から言う言葉、
「責任を取るのは、本人か全員かじゃ」

高校野球の不祥事でよく聞かれる連帯責任だけど、
なるほど、受ける側にそういう意識がなければ、連帯責任としての意味は、あまり無いのかも知れない。
DVD 東宝 2006/08/11 ¥6,300

(ネタバレ注意)

正直なところ、期待はずれだった。
というのも、自分はこの映画に笑わせてもらうことを期待していて、
コメディとして観ていたからだ。
最初の掴みで笑ったし、途中(特に西田敏行さんのところ)でも、いくつかは笑えた。
だけど、待てども暮らせども、全体的にちっとも笑えない。
「ああ、登場人物が多いから、まずは観る方に把握させるのだな」
と、最初の内は思った。
ひたすら待って、そして中盤を過ぎ、後半に入ってからようやく気づいたんです。
この映画は、コメディの匂いを纏ったドラマなのだと。
ドラマをコメディ仕立てにするんじゃない。
あくまでコメディ風味のドラマなのです。
気付いたのがあまりにも遅すぎた。
そのせいもあって、結局この映画は自分にとって全く面白くなかった。

作品の一つの売りとして、多くの登場人物が、同じホテル内で、時間軸を平行して絡み合う作りになっているのだけど、それも自分にとってはあまりプラスの評価にはならなかった。
とにかくキャラクターが多すぎる。
あっちこっちに話が飛ぶのにまずイライラする。
飛んだ先でこれといって笑えることもなく次に飛ぶ、の繰り返し。
ドラマとしてみても、人物が多すぎるせいで一つ一つが浅いように思えるし、
どれを取っても中途半端。

出演人が豪華なのも、それが仇となっている。
出番の少なかったりあまり目立たないポイントのキャラクターが、
存在感のある個性的な役者達によって、(キャラとして)大した事してないのに、きっちり頭に残ってしまうという、全体的な浅さを引き立たせてしまっているように感じました。
(もう自分で何を書いているのかわからなくなってきましたが)

とにかく、自分にとってはあまり面白くはありませんでした。
Amazonでの評価の高さを見ると、なんだかこちらがしっかり観てなかっただけかもと思えてきますが。
あくまで個人的な感想ですので。

アマデウス

2006年8月19日 映画
DVD ワーナー・ホーム・ビデオ 2003/10/03 ¥1,575

(ネタバレッっかもしれないから注意)

超有名作品。
自分はVHSで見ました。
ディレクターズカット版を観る勇気がなかったので(上映時間3時間)、
普通の方にしときました。
でも、見終わった後は、ディレクターズカット版にしとけば良かったと思いました。

モーツァルトの死因は推測で150ほどもあるといわれていますが、
要するにはっきりとしてないわけですね。
まあ、ある程度はっきりと死因がわかっている歴史上の偉人達も、
後に小説とか映画でいじられたりするのであんまり関係ないですが。

作曲家サリエリ。彼が晩年自殺を図り、神父に対して、自分がモーツァルトを殺したのだと話す。
回想形式で進んでいく物語。
モーツァルトに対する嫉妬、羨望、侮蔑、憧憬、理解、プライドという、相反する様々な心情の葛藤に苦しみながら、彼と接していく。
その中で、サリエリはモーツァルトに対して、とある陰謀を抱くようになる。
それはモーツァルトに対してのものだけではなく、神に対しての挑戦だった。

自分はクラシックについての知識はほとんど無いのでいまいちよく知りませんが、
サリエリという作曲家は、当時ではかなり喝采を浴びた名作曲家だったようです。
しかし劇中、年老いたサリエリが若い神父に自分の曲を弾いて聴かせてもさっぱり知らないというように、時代と共に彼や、彼の曲の存在は忘れ去られていきました。
しかし、モーツァルトの曲は生きていたのです。

自分が凡人であるということ、そしてどうしようもなく超えがたい、真の天才という存在。
誓いを立てた自分には凡庸な才能しか与えず、甲高い笑い声を上げる軽薄な人間に溢れんばかりの能力を授けた神。
サリエリの胸は去来する清濁の感情に飲まれる。
特に彼を苦しめたのは、モーツァルトの曲の素晴らしさを、誰よりも深く感じ取り、理解してしまえたことだろう。
一方でモーツァルトを憎み、一方で彼に心酔しているのだ。

二人の接し方、特にサリエリを見ていて思えるのが、その微妙な距離感。
数多くの演奏シーンの心地良さに加え、その心の機微、心理のやりとりが面白かった。
ディレクターズカット版では、追加されたシーンによって、二人の関係をさらに深く観ることが出来るそうで、いつかはゆっくり鑑賞したいと思っています。

あと、サリエリの曲も聴きたくなってしまって、
そっちもいつかCDを購入できたらと思っています。
DVD ハピネット・ピクチャーズ 2002/08/25 ¥3,990

(ネタバレ注意。)

以前フジテレビにて放送された4話のオムニバス作品。
これらの作品は結構完成度が高くて、特に「アサギの呪い」はトラウマになった人も少なくないという。
自分もあれ以来もう一度見たいという欲求に駆られていたのですが、
あったので、借りました。ふぅすっきり。

一話目の「恐怖心理学入門」は、監督が「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖さんということもあって、全体的にコメディタッチ。
主人公は大学のゼミで、「人は暗示によって幽霊を見るか」という実験に参加。
サクラとなって級友たちに暗示を仕掛けることになるが、次第に自分の周囲で不可解なことが起こり始め……。
なんと言っても最後のあのオチでしょう。二段オチの二段目。
母親は大笑いしていましたが。

二話目の「アサギの呪い」。
三人仲間の内、二人が一人をからかうために今ではもう使われていない旧校舎の一室へ連れ込んだ。
しかし帰ろうとしたときに、扉が開かなくなってしまう。
そこは昔、夏休み直前に扉を閉められたまま忘れられたアサギという女子生徒が、夏休み後にミイラ化して発見された部屋だった。
途方に暮れる三人だが、地下へ続く階段を見つけて、一人がそこから外へ繋がる出口を探そうと言い出す。
見回りの先生が来るまで待とうという二人の制止を聞かず、
強引に二人を誘って地下へ入っていく。
そして仲間の一人が取り憑かれたように「生きては帰れない。アサギのように」と口走り、服を引きずって歩くおぞましいモノに殺されていくという話。

これは大変ショックな話。
怖さを増幅させているのは、話の全体像を詳細に説明しないこと。
旧校舎の地下に何故あんな迷宮のような場所があり、なんのために使用されていたのかとか、あの怪物は何者なのか、とか、そういった背景が説明されていない。
加えて、全員襲われて(しかも親指で目を潰されて)死んでゆくところが、
「なんじゃあこりゃあぁあぁ」
という思いを胸に膨れさせた。
最後のカットも、襲われている少女達とは裏腹な、何気ない朝の登校の一コマという対照的で救いのないものだったのが印象に残る。

第三話「ドロップ」。
まあオムニバスに一つはある感動物語。
昔は何ともなかったけど、見直してみてちょっと胸にきた。
「悩んでいると、周りが見えなくなる」
なるほどねぇ。
どれだけ可能性があっても、分厚い雲に隠れた太陽のように、その輝きを見失ってしまうわけですよ。
ちなみに俺もカーブを投げるけど、どっちかって言うと、このドロップに近いのかもしれない。

第四話「おぞけ」。
これも印象に残っている。気持ち悪い系の話。
あまり周囲と交流を持たない、几帳面で生真面目な中年女性教師が、若手の先生グループとちょっとした交流を持つ。
しかし直後に中年女性教師は病死。
若手グループは葬式へ出席するが、二日目は出ずに遊びに行ってしまう。
そこで話題となっているアトラクションに乗ったときに、気味の悪い映像を見てしまう。
それ以後、グループの人間が一人、また一人と死んでしまったり、行方が知れなくなってしまう。
主人公がネットで異変の理由を調べると、そこには……。

とにかく何が印象に残るかって、最後のあれでしょ。
顔。昔見たときは口が開いて血が出たように覚えているんだけど、
見直してみたら普通に血が出ただけだった。
どっちにしても、気持ち悪いんだけどね。
おぞましい。

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