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6月15日の日記稀勢の里
2014年6月15日 エッセイ 先場所の稀勢の里はこれまでと何か少し違って見えた。今までも彼は場所ごとに少しずつ成長をしてきたのだけど、それまでと明らかに質の違う、一つ上の段へと足をかけたように見えたのだ。
それは千秋楽の取組に見て取れた。
終盤、白鵬との直接対決に敗れ、稀勢の里2敗、白鵬1敗で迎えた最後の取組。先に試合のある稀勢の里は、自身が負ければその時点で白鵬の優勝が決まってしまうため、絶対に負けられなかった。その取り組みで、彼は見事に勝って見せた。
白鵬も勝ったため、結局優勝決定戦には至らなかったが、最後まで可能性を残したという点で非常に大きな勝利だった。
白鵬に負けた時点でまだ数試合残っていたが、それ以降1敗でもすれば、白鵬の安定感からするとほぼ優勝は絶望的な状況だった。これまでの稀勢の里は、その負けられない状況下で取りこぼしてしまうことが多かった。だから負けなかったということに、大きな成長を見て取れたのだ。
彼は終盤にこう言っていた。
「普段通りに相撲を取れている」
これは優勝して横綱昇進を決めた鶴竜が言っていた「普段通りにやって勝てていることが大きい」という趣旨の発言と似ている。これはおそらく、稀勢の里も彼の発言に何か感じるものがったのだろう。
今まで稀勢の里は重要な試合になると特に、普段見られないような気合を入れて臨む姿が見られた。綱取りの期待がかかった初場所は、それが最初から感じられた。しかし結果は格下に取りこぼし、中盤で怪我、その後負け越して休場すると、翌場所も完治しない体で精彩を欠いていた。
迎えた本場所、本来の持ち味である粘り強い下半身とどっしりとした腰で相手の押し引きを封じ込め、冷静に、力強く土俵の外に追いやる彼の姿がそこにあった。
怪我の癒えた体、そして、強くなったメンタリティ。それはこれまで欠けていた何かが埋まったような、大きな期待を抱かせる姿だった。
一歩一歩の成長だった。
大関としては抜群の安定感を誇り、先に横綱に出世した鶴竜よりもアベレージとしての成績は良かったように思う。しかし、優勝ができない。
チャンスはあったが、あと一歩届かない。毎場所必ず何かしらの課題を突き付けられた。それを一つ一つ、不器用に、克服しようと取り組んだ。
悔しかったであろう自身の失速と、鶴竜の横綱昇進。それらの逆境からエッセンスを吸い取り、成長へと繋げた。不器用だが、これが稀勢の里。一つ一つ成長する。これまでの足踏みが、今の彼を作っているのだ。
怪我がちの琴奨菊、柔らかく技術はあるが、腰や下半身が決まらない遠藤。豪栄道にしても、それ以外の日本人力士を見ても、稀勢の里との差は大きい。
白鵬の言動も、以前と微妙に違ってきているように思う。稀勢の里の力を認めている、という点では同じだが、以前は彼を気遣う余裕を見せていた。今はどことなく、彼への対抗心やプライドを垣間見せているような気がする。真剣になってきているのだ。
今、横綱に昇進できる日本人力士は、稀勢の里以外見当たらない。
このまままたひとつづつ成長を続けていけば、白鵬と優勝を分け合う、本当に強い日本人力士の土俵に立っている姿を見られる日も、そう遠くはないだろう。
それは千秋楽の取組に見て取れた。
終盤、白鵬との直接対決に敗れ、稀勢の里2敗、白鵬1敗で迎えた最後の取組。先に試合のある稀勢の里は、自身が負ければその時点で白鵬の優勝が決まってしまうため、絶対に負けられなかった。その取り組みで、彼は見事に勝って見せた。
白鵬も勝ったため、結局優勝決定戦には至らなかったが、最後まで可能性を残したという点で非常に大きな勝利だった。
白鵬に負けた時点でまだ数試合残っていたが、それ以降1敗でもすれば、白鵬の安定感からするとほぼ優勝は絶望的な状況だった。これまでの稀勢の里は、その負けられない状況下で取りこぼしてしまうことが多かった。だから負けなかったということに、大きな成長を見て取れたのだ。
彼は終盤にこう言っていた。
「普段通りに相撲を取れている」
これは優勝して横綱昇進を決めた鶴竜が言っていた「普段通りにやって勝てていることが大きい」という趣旨の発言と似ている。これはおそらく、稀勢の里も彼の発言に何か感じるものがったのだろう。
今まで稀勢の里は重要な試合になると特に、普段見られないような気合を入れて臨む姿が見られた。綱取りの期待がかかった初場所は、それが最初から感じられた。しかし結果は格下に取りこぼし、中盤で怪我、その後負け越して休場すると、翌場所も完治しない体で精彩を欠いていた。
迎えた本場所、本来の持ち味である粘り強い下半身とどっしりとした腰で相手の押し引きを封じ込め、冷静に、力強く土俵の外に追いやる彼の姿がそこにあった。
怪我の癒えた体、そして、強くなったメンタリティ。それはこれまで欠けていた何かが埋まったような、大きな期待を抱かせる姿だった。
一歩一歩の成長だった。
大関としては抜群の安定感を誇り、先に横綱に出世した鶴竜よりもアベレージとしての成績は良かったように思う。しかし、優勝ができない。
チャンスはあったが、あと一歩届かない。毎場所必ず何かしらの課題を突き付けられた。それを一つ一つ、不器用に、克服しようと取り組んだ。
悔しかったであろう自身の失速と、鶴竜の横綱昇進。それらの逆境からエッセンスを吸い取り、成長へと繋げた。不器用だが、これが稀勢の里。一つ一つ成長する。これまでの足踏みが、今の彼を作っているのだ。
怪我がちの琴奨菊、柔らかく技術はあるが、腰や下半身が決まらない遠藤。豪栄道にしても、それ以外の日本人力士を見ても、稀勢の里との差は大きい。
白鵬の言動も、以前と微妙に違ってきているように思う。稀勢の里の力を認めている、という点では同じだが、以前は彼を気遣う余裕を見せていた。今はどことなく、彼への対抗心やプライドを垣間見せているような気がする。真剣になってきているのだ。
今、横綱に昇進できる日本人力士は、稀勢の里以外見当たらない。
このまままたひとつづつ成長を続けていけば、白鵬と優勝を分け合う、本当に強い日本人力士の土俵に立っている姿を見られる日も、そう遠くはないだろう。
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