鶴竜が横綱昇進を決めた場所で言っていたのが、
「普段通りやって勝てているのが大きい。もし普段より力を入れて優勝しても、横綱になってから続かないと思う」
 みたいなことを言っていて、ああそうだなぁ、まさにそうだなあと納得した記憶がある。

 普段通りやれるというのは大きいのだ。
 もちろん絶対的な力量が大きいほうがいいに決まっている。もし全員が普段通りに試合に臨めた場合、力量の大きいほうが勝つわけだし、力量に大きな差があれば、普段通りにやれたとしても勝てない場合もある。
 しかし実際にはみんななかなか普段通りに物事に臨めなかったりする。しかもここ一番という試合ほど心が乱れる。そして、心が乱れると、思いもよらないミスを犯して、悪い結果につながることになる。

 普段通りやれていれば、相手が勝手に自分よりも力量を落としてくれる可能性があるし、ミスを犯す確率も抑えることができる。

 しかしではそれをどうやって実現するかというとなかなか難しい。

 プロスポーツでは、それを型に求めたりする。
 野球で言えば、バッティングフォームや投球フォーム、相撲で言えば、例えば組み合う直前の蹲踞の状態と言える。
 自分の体と心に合ったしっくりくるフォームを見つけていれば、その体勢に入ることで、自動的に心が整理され、落ち着けるようになる。
 ルーティーンとかもそうだろう。

 ただ、ではビジネスマンが型を、と言っても、なかなかイメージしづらい。普段から姿勢や歩き方などでそれを見つけておくというのも手だろうけど、何か特殊な動きを必要とするわけでもなく、心を平静にする姿勢というのも得づらい。
 姿勢を整えるというのは間違った考えではないと思う。これも重要な要素なのだけど、それだけでは安定した心理状態を確保できない人も多いと思う。

 安定した心理状態を得るには、それを担保するバックグラウンドが必要になってくるのかもしれない。
 落合博満氏の言う「体技心」の順番、のような。徹底して土台作りをする、徹底して勉強して知識的土台を作っておく、それによって心の強さ(自信)がついてくる。という具合の。
 で、もう一匙、「大丈夫だろう」という気分に入るスイッチの入れ方を見つける作業が必要になってくるのかもしれない。
  



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