2011年1月1日以降から同年7月15日までに観た映画の簡易感想。
 括弧内のアルファベットは映画館。e^raは「シネマイ~ラ」のこと。tohoは「TOHOシネマズ」のこと。tvはテレビ放映。数字は鑑賞日と上映時間。
 TV鑑賞時は基本的に「~ながら見」であり、見逃し等もあるので参考記録となる。
 ネタバレありなので注意。

-----------------------------------------------------------------
・「サウンド・オブ・ミュージック」1/4(TV)(174分)(アメリカ)
→修道女がやもめ一家の家庭教師となり絆を形成する話。2度目か3度目の鑑賞。史実に忠実かどうかはさておき、映画としてはハートフルでスリルも味わえて音楽的カタルシスも味わえる名作。

・「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」1/5(e^ra)(95分)(日本)
→とある物書きが裁判ものの映画に携わるため裁判所に通い詰めるうち、色々な人と知り合って楽しくなったり真剣になったりする話。ポップな裁判所事典の様な作りで楽しんで見られるが、ドラマはない。

・「百万円と苦虫女」1/6(TV)(121分)(日本)
→自分の居場所を見つけるために金を貯めては住む場所を変える女性の話。うろ覚え。結局、何が言いたかったんだろうか? 逃げる者に幸はない、と言うことか? 世の中理不尽だ、と言うことか?

・「書道ガールズ 青い青い空~私にだってある 伝えたい気持ち~」1/7(e^ra)(128分)(日本)
→静岡県浜松市を舞台にしたご当地映画。意外にもキャラクターは立っているしストーリーもユーモアを交えて程良くまとまっていてポップ。スウィングガールズなどのように展開としてはありがちな青春ものだが、定石に則っているのでそれなりに楽しめる。飽くまでそれなりに。エンタメだけを追求しない分脚本にもたつきがあるし、主人公がやや希薄なのが残念。ただその分考えさせる要素もある。

・「容疑者Xの献身」1/8(TV)(128分)(日本)
→人気テレビシリーズ劇場版。孤独な犯人にスポットを当て、かつて彼と親交のあった主人公が追い詰めていく展開。監督は「アマルフィ」や「県庁の星」の西谷弘。丁寧だし情緒的だし演出は個人的には好き。話は感傷的で、自分は好き。

・「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡~」1/12(e^ra)(87分)(フランス)
→アフリカのキンシャサで貧しく不自由な生活を送りながらも、魅力的な音楽を披露するバンド「ベンダ・ビリリ」の苦労と成功を追ったドキュメンタリー。貧しくも何らかの形で音楽と接触し、演奏する逞しさ。そして色々な音楽がミックスされたような創造性。人間性の重要さが見て取れる。

・「瞳の奥の秘密」1/13(e^ra)(129分)(スペイン・アルゼンチン)
→かつて連邦刑事裁判所に所属した男性が在職時に遭遇した事件を小説にしようとする。そして当時の同僚だった女性と再会し、事件が回想される。その中で、とある真実が見えてきて……。アカデミー賞外国語映画賞を受賞したようだが、個人的にはいまいちだった。話の構成は過去と現在が相互に展開される形で、それがこの映画の仕掛けであり特徴や味にもなっているのだけど、個人的には時系列にストレートにした方が、とも思えた。ただそれなりには楽しめた。隔てられた愛。映画のラストに全てがある。

・「ペルシャ猫を誰も知らない」1/19(e^ra)(106分)(イラン)
→電力不足、西洋文化の規制、そんなイランで西洋音楽の魅力に惹かれた若者達が細々と演奏を続けていた。映画はドラマ仕立てだが、出演者は実在の音楽家達。話としては規制に対する抵抗や批判なのだが、そんなことよりも現在のイランにおけるアングラ音楽を広く紹介する作りになっていて、そちらがメイン。
 ジャズ、ブルース、ヒップホップ、ニューウェーブ、ヘヴィメタ、パンク、ロック、伝統的民俗音楽、フォーク等。ドラマと音楽とどっちつかずで映画自体は中途半端な印象。音楽のクオリティでは驚くようなものもあった。

・「マザーウォーター」1/28(e^ra)(105分)(日本)
→近年、荻上直子監督が開拓している、女性向けのナチュラル系、ゆるゆる、スローライフ礼賛の流れにある作品。監督は荻上監督と一緒に仕事をした松本佳奈。
 ストーリーはあってないようなもの。ほのぼのした空気の中でリラックスし、人生を肯定するような映画。

・「ソーシャル・ネットワーク」2/1(toho)(121分)(アメリカ)
→フェイスブック創業者の事業拡大と人間関係のもつれを描いたドラマ作品。展開はテンポ良く、音楽や視覚的刺激も効いていて楽しめる。
 
・「エル・トポ デジタルリマスター版」2/3(e^ra)(123分)(アメリカ・メキシコ)
→妻を亡くした男と少年が旅をする話。事前にカルト映画と聞いていたが確かにカルトだった。輪廻とか因果とかドラクエとかファンタジーとか、そう言うのが好きな人はプラス査定になるかもしれない。

・「パリ20区、僕たちのクラス」2/11(e^ra)(128分)(フランス)
→フランスのとある学校で外国人ばかりのクラスを教える教師達の苦労と葛藤。ドキュメンタリーっぽいがフィクション。ドラマティックな展開はないため、退屈に感じる人は多そう。ただし、問題児への対応や外国人の社会適応など、考えさせられる内容ではある。

・「パラノーマル・アクティビティ2」2/14(toho)(91分)(アメリカ)
→好評を博したホラー作品の続編。今作は話というかキャラクターの性格的な問題などで展開や動機付けが遅れてしまっている。怪奇現象も前作とさほど変わらず、話としても怖さとしても消化不良。次作も決まっているらしく、1作目の出来事を今後に繋げていくために動機や伏線の修正が図られている。次作へ向けてストーリーを整理するような位置づけの作品になっている。

・「太平洋の奇跡~フォックスと呼ばれた男~」2/14(toho)(128分)(日本)
→サイパンにおいて日本軍の米軍に対する抵抗を描いた作品。日本が戦争映画を撮るとどうしてこうも詰まらなくなるのだろうか。アメリカ側と日本側でそれぞれの国の撮影スタッフが別々に取り分けているのだが、脚本も含めて、その出来の違いが目立ってしまっていた。

・「ウォール・ストリート」2/14(toho)(133分)(アメリカ)
→かつての映画「ウォール街」の久方ぶりの続編。主人公の婚約者の父は昔ウォール街で鳴らした男だった。彼が釈放されることで、引き起こされるゴタゴタ。前作を見ていないので何とも言えないが、楽しめなかった。サブプライムローン問題の再現であり、ドラマや駆け引きには乏しく映った。

・「メッセージ~そして、愛が残る~」2/18(e^ra)(107分)(ドイツ・フランス・カナダ)
→人の死が見える男が主人公に接触する。死を前にして、心や考えが変化していく中で見つけたものとは。ファンタジックな要素はあるが、基本的には人への想いや死生観に関するドラマ。

・「ヒアアフター」3/1(toho)(129分)(アメリカ)
→津波に呑まれて生死を彷徨った女性、霊能力を持った男性、双子の兄(?)を亡くした少年。数奇な巡り合わせで繋がる、喪失を抱えた人間の物語。クリント・イーストウッド監督の手慣れた作りで見やすい。冒頭の津波のシーン以外はスペクタクルに欠けるが、ドラマはスピリチュアルで静かで優しい。この映画からなにかを得られるかどうかはわからないが、精神的に洗われるような作品。

・「約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語~」3/4(e^ra)(126分)(ニュージーランド・フランス)
→野心を持った若い小作農(?)が天使と接触することで起きるドラマ。人生とはなにか、と言うことを、ワインを通して描く。

・「義兄弟~SECRET REUNION~」3/10(e^ra)(116分)(韓国)
→北朝鮮のスパイと韓国の国家情報員がひょんな事から一緒に生活をすることに。探り合いと絆の形成のドラマ。事前に面白い映画と聞いていたので期待していたが、自分としてはいまいち。冒頭とラストの銃撃を含めたアクションシーンは見応えがあるが、中盤の探り合いの部分が消化不良。これは脚本の問題だろうか。もうすこしスリルやサスペンス、もしくは感情移入しやすい作りに出来そうなのだが。

・「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」3/10(e^ra)(118分)(日本)
→アルコール依存症の男の堕落と再生のドラマ。漫画家・西原理恵子の元夫である鴨志田穣の視点から描いた作品。作品の色調やBGM、テンポなど、演出は淡々としていて劇的なものはないが、テーマや構造がスッキリしていて見やすい。なんとなく女子よりも男子向きの内容かもしれない。佳作。

・「英国王のスピーチ」3/14(toho)(111分)(イギリス・オーストラリア)
→吃音症の英国王の克服記。吃音の克服というわかりやすいテーマを軸にして観客を引き込む。そしてそれに伴う人間関係やトラウマなどを通し、人間の成長を描く。見やすく、勇気の出る映画。

・「人生万歳!」3/17(e^ra)(91分)(アメリカ)
→ウディ・アレン監督のひねくれたドラマ。手慣れた作りでまとまっていてまとまりすぎていて逆にどうなの?と言う感じの映画。要するに人生何でもあり、と言うことをひねくれた男の人生で描く。ユーモアと理屈と価値観の裏表。ユニクロと日本映画に好意的な反面、実際の社会的な位置づけも感じさせる。

・「プラダを着た悪魔」3/20(tv)(110分)(アメリカ)
→ファッションに精通していない女性が有名ファッション雑誌の編集長にこき使われて頑張っちゃう話。カラフルでポップでテンポも良い、話の流れもしっかりしているし、普通に良い映画。

・「その街のこども劇場版」3/30(e^ra)(83分)(日本)
→阪神大震災から15年後。当時被災した男女が出会う、プチロードムービー。「追悼のつどい」の会場まで向かう中での回顧と今。佐藤江梨子の関西弁に違和感を覚えるが、それ以外は森山未來との掛け合いなど、とても面白い演技で楽しく見られた。雰囲気を含め、良い映画。

・「エリックを探して」4/15(e^ra)(117分)(イギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スペイン)
→子供達との関係や、彼らの持ち込む問題に頭を悩ます男が、ドラッグと友達と大好きなサッカー選手エリック・カントナに励まされ、事態を打開していくコメディドラマ。普通の映画だと思うが、人生へのヒントも含まれている。それなりに楽しめるのでは。男向けかなあ。

・「白いリボン」4/26(e^ra)(145分)(ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア)
→第一次世界大戦前夜のとあるドイツの村で次々と起こる事件。その裏にある、人々の心の闇。モノクロ、と言うかモノクロに近いセピアというか、そう言う映像。BGMも特になく、淡々と事実を見せていく。シーンを断片的に繋いで、核心は決して見せない。しかし、ヒントはある。見終わった後はもれなくモヤモヤが残るだろう。地味で意味不明で詰まらないと思うか、ミステリにワクワクするか。好みの別れそうな映画。

・「モンガに散る」4/29(e^ra)(141分)(台湾)
→父のいない物静かな男子高生が不良に目をつけられる。しかし、別の不良グループに助けられ、極道の世界に足を踏み入れる。楽しかった日々、変わっていく状況。友情と思惑が交叉するドラマ。映像も煌びやかでテンポ良く、ユーモア、アクション、ドラマが絡み合って素晴らしい出来。

・「ヘヴンズストーリー」5/13(e^ra)(278分)(日本)
→家族を殺された少女、妻を殺された男、男の妻を殺した少年、孤独な女性、殺し屋と息子。少年犯罪や復讐、愛と赦しをテーマにして、約4時間半に渡って描かれるドラマ。幻想的な映像と惹きつける演出など、全体的には割と面白く、時間ほど長さを感じないが、それでも疲れる。殺し屋の話は面白かったが、丸々カットしても問題はなさそうな気がする。それは極端な話だが、もっと脚本をシェイプアップできなかっただろうか? 

・「フード・インク」5/17(e^ra)(94分)(アメリカ)
→アメリカの食糧事情、特にファーストフードに使用される肉などがどのように生産されているのかを、「工場フードシステム」をキーワードに映し出すドキュメンタリー映画。虐げられる農家、物のように生産される不健康な命、そしてそれを食すことによって悪影響を受ける人間。この映画に描かれていることがそのまま日本に当てはまるかはわからないがぞっとする部分もある。アメリカらしく、ドキュメントと言ってもエンタメ性を備えていて見やすい。

・「ありあまるごちそう」5/17(e^ra)(96分)(オーストリア)
→食の問題について提起するドキュメンタリー映画。「フード・インク」に比べるとよりグローバルな視点で映しているが、作りが淡々としているため、見やすさでは劣る。それだけ作り手の誘導が少ないとも言える。

・「ヤコブへの手紙」5/26(e^ra)(75分)(フィンランド)
→殺人を犯した中年女性が恩赦(?)を受け、老牧師の家で彼の世話をすることになる。孤独と癒しのドラマ。シンプルで静かで登場人物も少ないが、伝えるべき事を絞り、情緒的な演出で見せている。人生とはなにか、ということ。良い映画。

・「地球が静止する日」5/27(tv)(106分)(アメリカ)
→あまり覚えていないが、詰まらなかった、と言うことだけはよく覚えている。スペクタクルは少なく、その割にドラマは幼稚。子供向けに作られたのならそれなりの価値はあるかも。

・「プルーフ・オブ・ライフ」5/28(tv)(135分)(アメリカ)
→某国で人質になったアメリカ国民を救出するために主人公達が頑張っちゃう映画。それなりにスリルもサスペンスもアクションもあって楽しめた記憶がある。

・「イップ・マン 葉問」5/30(e^ra)(109分)(香港)
→ブルース・リーも師事したという男、イップマンの伝記的映画。人間としての彼の素晴らしさを描きつつ、外国から抑圧された中国の鬱憤を晴らし、自尊心を盛り上げる要素も含む。日本で力道山が歓声を浴びたようなものか。助演のサモハンキンポーを含む役者陣のアクション(カンフー)が素晴らしい。ドラマとしてのカタルシスもあり、良い映画。

・「ブラック・スワン」6/1(toho)(108分)(アメリカ)
→白鳥の湖の主演を目指す主人公の女性。内なる不安を抱く彼女に襲いかかる、幻覚とも現実とも取れない出来事の数々。そして凄絶なクライマックス。この映画はホラーとかスリラーとかそう言うジャンルのドラマ。少女が女性に脱皮しようとする際に伴うエロティックな出来事も含め、見る前には心の準備が必要。ハートフルな映画では決してない。しかし、全てが面白い。
 
・「ウッドストックがやってくる!」6/3(e^ra)(121分)(アメリカ)
→1960~70年代頃のアメリカ。田舎町にあるつぶれかけた実家のモーテルと周辺の自営業者達を救うべく若い主人公が奔走する。ある時、近くの街で予定されていた音楽フェスティバルが中止になったと聞き、街の活性化のために誘致をしようとするが、それがヒッピーの祭典と知った保守的な中老年達は反対する……。
 誘致から開催に到るまでの主人公の頑張りは面白く見られたが、ドラマとしての起伏は少なく、平坦な印象。テンポが一定なのだろうか? 事実に基づいたドラマというのはどの程度脚色すればいいのか難しいところでもある。 でも全体としては華やかだし、それなりに楽しく見られる。主人公の自己発見の映画でもある。

・「再生の朝に-ある裁判官の選択-」6/8(e^ra)(98分)(中国)
→娘を盗難車による交通事故でなくした裁判官が、別件の自動車盗難事件の犯人を死刑にして、あれこれ苦悩する話。権力の座に就く者は感情的にならず、汚職に手を染めず、法を遵守して冷静に仕事をするように、というメッセージを含んだ中国らしい映画。

・「180°SOUTH ワンエイティサウス」6/8(e^ra)(87分)(アメリカ)
→登山家が世界を巡りながら、自然について語る自然礼賛ドキュメンタリー。この映画の主張もわからないでもないし、作品の視点を決めて作る必要性もわかるが、それでも思想が偏っている。彼らが自由に旅をして楽しんでいられるのも、文明化の恩恵があってこそだろう。ただまあ、こういう偏った見方も、世の価値観のバランスを保つためには必要なのかもしれない。

・「台北の朝、僕は恋をする」6/9(e^ra)(85分)(台湾、アメリカ)
→恋人がフランスへと発ち、彼女のことが忘れられない男が後を追おうとするが、彼を慕う女性や友人と一緒にドタバタに巻き込まれるラブコメディ。役者の衣装や街並みなど映像はカラフルで小綺麗。ストーリーはシンプルだがテンポは良く、ハートフルな笑いが散りばめられていて心地良い。ポップでスタイリッシュ。長らく不振だったという台湾映画も、「モンガに散る」といい、「海角七号」以来変わってきているのかもしれない。たまに観る台湾の映画がだいたい日本に対して好意的で、本当に嬉しい。

・「さや侍」6/14(toho)(103分)(日本)
→脱藩した浪人がとある藩に捕らえられ、「三十日の業」と称する刑を下される。笑顔をなくした若君を笑わせるため、一日一芸を披露し、笑わせられなければ切腹となる、と言う筋書き。個人的には久々の金返せ級映画。金返せっ! 全てが中途半端。コメディベースなのに笑えた箇所がほとんどなく、テレビでやっていることの劣化版という感じ。ドラマとしては主人公の行動原理も映画としてのメッセージも手前勝手で腹立たしい。前二作も映画のラストで世界観をぶち壊すことをしていたがそれはコメディベースの映画をコメディでぶち壊していて自分は笑えた。ただ今作はコメディベースの映画を真逆の形でぶち壊していて、それを達するためのちゃんとした段取りもなく、唖然とした。松本人志という人は、奇抜な設定を軸にした作家性の強い作品はありでも、ドラマは書けない人なのかもしれない。

・「イーグル・アイ」6/18(tv)(118分)(アメリカ)
→謎の女性に指示され、大きな事件に巻き込まれていく男女を描くサスペンスアクション。最初から終盤までわけがわからないままサスペンスで引っ張り、謎が解けて映画が終わるときれいさっぱり忘れる映画。まあ、2時間楽しめるので。

・「婚前特急」6/22(e^ra)(107分)(日本)
→5股をしている女性が友人の結婚を機に男どもを査定して誰と結婚するか、と考える話。ポップでユーモアがありテンポ良く、万人に向く映画だと思うが、個人的には脚本に疑問。動機付けや伏線が不十分でなかろうか? 査定に移った段階で初っ端から一人の男に執着し始めて戸惑った。こういう展開なの? と。演出などに助けられた形だろうか。演者の演技も含めてまずまず楽しく見られた。

・「アメイジング・グレイス」6/26(e^ra)(118分)(イギリス)
→18~19世紀のイギリス。黒人奴隷の解放を目指す議員ウィリアム・ウィルバーフォースの半生を描く。話の途中までは回想形式で描かれ、それが効果的かはともかく、全体としてはカタルシスもあるし、意義のある映画。政治の理想と難しさが見られる。友情と、愛の支え。

・「ブンミおじさんの森」6/28(e^ra)(114分)(イギリス・タイ・ドイツ・フランス・スペイン)
→体調を悪くしたブンミの元に親戚がやってくる。食事をしていると、死別した妻、行方不明になった息子もやってきて……。ティム・バートンが絶賛した映画。ストーリーはシンプルで、ほとんどない。要するに輪廻とか転生とか命の形とかそういったことを描く。風景や何気ない会話をゆったり長回しで見せ、BGMもこれまたほとんどない。役者のセリフも、そういう言語の特性なのか役者の問題なのか、メリハリがなく退屈。ただファンタジックな要素や自然描写は面白く見られた。どう考えても万人向けとは思えない。上記のような特性を肯定的に捉えられるかどうか。

・「スカイライン-征服-」7/1(toho)(94分)(アメリカ)
→友人のパーティに参加している主人公カップルが、そこで宇宙人の侵略に遭う話。ヒーローでも何でもない一般市民の視点から描かれ、ただひたすら逃げまどう姿を追う。宇宙人との対話もなく、ただひたすら彼らの侵略と軍の抵抗を大がかりなVFXで見せる。可もなく不可もなくそれなりの映画。

・「冷たい熱帯魚」7/7(e^ra)(146分)(日本)
→90年代に実際に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件を基に脚色されたフィクション。事件自体も凄絶だしキャラクターもぶっ飛んでいるし、全編を通してテンションが維持されていて、最後まで一気に見られる。監督がピンク映画出身で、AV女優も起用されているし、エロティックでサディスティックでグロテスクで猟奇的。暴風雨みたいな映画。ただ脚本がちょっと散らかっているのが個人的に残念。方向性が。悪い映画ではない。

・「ショパン~愛と哀しみの旋律~」7/11(e^ra)(126分)(ポーランド)
→ショパンがポーランドからフランスに渡り、死ぬまでの人生を描いた作品。未熟な人間達の愛憎劇。愛をテーマにドラマ部分を軸にして描いているため、その他の部分については説明が省かれていたり大雑把だったりする。やや感情の積み上げにも欠けるし、映画としては平凡。

・「マイティ・ソー(3D)」7/14(toho)(114分)(アメリカ)
→北欧神話をベースにしたSFファンタジー? アースガルズの王になるにはやんちゃすぎたソーが地球に追放され、そこで色々と学んでいく話。話としては適度にまとまっているし、アクションやスペクタクルもあるが、キャラクターの動機付けに欠けていたりして、まあまあの域を出ない。初3D体験だったが、これもいまいち。目を引くところもあったが、飛び出す絵本のようなちゃちさや違和感を感じてしまったりした。冒頭のトランスフォーマーの予告編のほうが凄かったよ?

・「アイ・アム・ナンバー4」7/14(toho)(110分)(アメリカ)
→異星人に侵略され、生き残ったエイリアンが地球に逃げてきたが次々に殺され、今度は主人公の番になる。思春期に差し掛かった彼の青春と戦いの話。異星人に襲われるとか、特殊能力がどうとか、そういうことと平行して物語の中盤まで青春に勤しんでいる。展開が遅いけどこんな事してて尺は大丈夫? と思ったが、この映画はそこを割り切っていた。頑張ればあと2,3本続編作れそう。それなりに面白かった。

・「キミとボク」7/15(e^ra)(45分)(日本)
→漫画家志望の男性と、彼に拾われた猫の物語。映画の序盤では猫の愛くるしさに客席から笑い声が漏れ、後半へ向かうに従い、すすり泣く声が聞こえてくる。そしてスタッフロールが流れ、場内が明るくなっても、自分が立ち上がるまでしばらく誰一人立ち上がらなかった、そんな映画。自分は泣かなかったが、主人公男性の苦悩がもっと描かれていたら号泣間違い無しだった。危なかった。坂本真綾のエンディング曲も良かった。

・「シリアスマン」7/15(e^ra)(106分)(アメリカ)
→主人公に次々と襲いかかる不幸。時系列に断片的なエピソードを繋いでいるが、それぞれは明確な関連性を持たない。しかし、どうも関連があるような臭いは漂っている。「不確定性原理」の話が出て来るが、要するにこの映画はこういう事だ。「実際の所、わからない」。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。関わったかもしれないし、関わっていないかもしれない。悪霊かもしれないし、人間なのかもしれない。主人公はユダヤ系でユダヤ系のコミュニティに属しているし、文化やキリスト教(ユダヤ教?)なども出て来る。その方面の知識があれば、作品を別の切り口から見ることが出来るかもしれない。

コメント