パラノーマル・アクティビティ の感想
2010年2月11日 映画 2月1日に鑑賞した「パラノーマル・アクティビティ」という映画についての感想。
(ネタバレ注意)
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・筋
同棲を始めた若いカップルのミカ(男)とケイティ(女)は、夜中に自宅で異変が起こっていることに気付く。
機械好きのミカはそれを確かめようとカメラを購入し、日常を撮影。夜には二人が眠る寝室にセットするのだった。
朝起きて確認すると確かに不審な現象が映っている。最初は超常現象に懐疑的だったミカの気持ちにも変化が起き始め、事態を解明しようと躍起になっていく。
カメラに映る不可思議な現象は日毎に頻度や妖しさを増し、危険を感じたケイティはミカに撮影の中止を訴えるが、彼はきかない。
エスカレートしていく事態に二人が命の危機を感じ始め、そして……。
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・切り口
~目に見える恐怖と、目に見えない恐怖~
人は「わからないこと」、「理解出来ないこと」に対して不安や恐怖を感じる。正体が不明であるから、合理的な対処の仕方がわからないのだ。これらは生物が生き残ってくる過程で獲得してきた仕組みと言えるのかも知れない。
しかし人間は脳が発達したことにより、あれこれと考えることを止められなかった。そのため昔から、人知では計れない出来事に対して、その時点で考え得る事柄をあてはめたり、想像したりして人間は対処してきた。そういった物の中に、神や悪魔や妖怪と言った物が含まれているのである。
何か理解出来ないことが起これば、それは彼らの仕業であると考えられた。そして、そういった超常的な出来事に対して人が出来ることはほとんどなかった。ただ祈ったり、特別な力を持つ存在に頼ったり、生け贄を差し出したり、時には諦観を持ってやり過ごしてきたのだ。
ところが近年、人間は飛躍的に科学と文明を発展させた。その事により、今まで超自然的とされてきたことが、実は別に何の変哲もない、ただの自然現象であるとわかってきてしまったのである。
人は現段階で科学的に確かめられていない事柄、気持ちや感情の繋がり、物事の因果など、アバウトでつかみ所のない物を、胡散臭いものとして昔よりも遠ざけてしまったように思える。
例えば、「人のことを悪く思うと、自分にそれが返ってくる」という考え方があったとする。一見すると根拠がないのだが、好意の返報性だとか、感情と表情(や態度)の関連など、連関してくる研究によって説明できないことはない。
こういった感情などに絡んでくることは、状況や被験者の設定や環境など、変化や項目が多岐にわたるためなかなか研究しづらいとは思う。また、日常生活において、そういった物はなかなか目に見えないから、あまりリアリティを持つことも出来ないのだ。
感情や気持ちが与える影響を語ると、ともすれば日本では神秘主義と関連付けてみられることもある。無批判に受け入れてしまう人の中には神秘主義に没入していく人もいるとは思う。それはお勧めできないのだけど、決して非現実的で、超常的ではない作用が日常の中に溢れているのだと考えることが出来れば、普段の出来事に対する見方も変わってくるのではないだろうか。
それらはなかなか、コントロールすることが難しい。だから、自分の力を過信せず、謙虚な気持ちを持って行動できる。
本作の登場人物であるミカは、機械好きで、自立心、自負心に富んでいる。そして現実的だ。
最初は超常現象をバカにしていたが、カメラにそれらが認められると、一転して真剣に向き合うようになる。
ただ彼に問題があったとすれば、自負心が強すぎたのだ。
自分の住む家で起こっている現象を解決し、彼女を守るのは自分だという強い義務感は一種の英雄のようにも見えるが、地力や状況を見誤っていればただの無謀な挑戦でしかない。
目に見えない相手であったことが彼の判断を誤らせたのだろうか。「自分の力で何とかする(出来る)」という彼の決意が、惨劇を増幅させることになる。
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・趣向
超低予算ながら全米で観客動員1位を記録し、あのスピルバーグをして「リメイク不可能だからそのまま放映しちゃいなよ」と言わしめたという映画。
作品の作りとしては、全編、登場人物の回していたカメラの映像を編集したものと言うことで、色々な面で「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思わせる。(2作目が転けたらまんま)
最初はちょっとした怪奇現象が、だんだんエスカレートしていくという内容。
予算が少ないため、ハリウッド的な大がかりな映像表現はほとんどない。つまり、どちらかというと日本のホラーのように、心理的にじわじわと追い詰めていくタイプの映画。
ヒントはあるが、出来事の真実がなんなのかは具体的に語られない。終わり方も決して後味の良いものとは言えないため、モヤモヤを残したくないという人には向かないかも知れない。(個人的には刺激的だったし、色々考えた)
話の筋としては一種の悲劇なのだけど、一応破綻はないと思う。場所ではなく人について回るため、超常現象から簡単に逃げられないと言うことになっている。ミカの行動に疑問を持つ人は出て来るだろうけど、彼の性格を受け入れることが出来れば問題なく見られそう。
ただ一つ、専門家の件で、頼れる人は他にいなかったのか、と言うことが挙げられる。が、劇中で専門家に頼っても無理なのでは? と思わせる描写もあり、そういう意味で助かるための希望がひとつひとつ消されていくという点で、恐怖感を煽っている。
「ブレア・ウィッチ~」にしても本作にしても、以前どこかで日本のホラー映画の影響を受けているというようなことをチラ見したことがある。
実際どうなのかはわからないが、作中、それを思わせるようなシーンが散見された。
また、登場人物等に指摘されない怪奇現象もあるので、それらも合わせて「このシーンはもしかしたら」と探りながら見るのも面白いかも知れない。
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・個人的感想
映画のラストが衝撃的であり、その後低予算映画のためかスタッフロールが流れない。しばらく黒い画面が続くのだけど、その時に、劇中、怪奇現象が起こる際に発生する重低音が流れ続けている。
暗い館内と同居して、まさに今そこに「奴」がいるのかと言う感じにさせてくれたのが良かった。
説明があまりないため、考えるのが面倒という人には向かないのかも知れないが、個人的には「あれはああなのか?」とか色々考えられて面白かった。
まあそもそも、そんなに難しい見せ方ではないと思うけど。
また、個人的にはネトラレ(NTR)映画としても楽しめた(笑
ネトラレ属性のある人は、想像力をフルに発揮すればそういう意味でも楽しめそう。
女性にとっては、ストーカー被害的な恐怖を味わえる映画とも言える。一人の女を賭けた、男同士の(嫉妬やプライドによる)争いとも言えるわけだ。
(ネタバレ注意)
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・筋
同棲を始めた若いカップルのミカ(男)とケイティ(女)は、夜中に自宅で異変が起こっていることに気付く。
機械好きのミカはそれを確かめようとカメラを購入し、日常を撮影。夜には二人が眠る寝室にセットするのだった。
朝起きて確認すると確かに不審な現象が映っている。最初は超常現象に懐疑的だったミカの気持ちにも変化が起き始め、事態を解明しようと躍起になっていく。
カメラに映る不可思議な現象は日毎に頻度や妖しさを増し、危険を感じたケイティはミカに撮影の中止を訴えるが、彼はきかない。
エスカレートしていく事態に二人が命の危機を感じ始め、そして……。
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・切り口
~目に見える恐怖と、目に見えない恐怖~
人は「わからないこと」、「理解出来ないこと」に対して不安や恐怖を感じる。正体が不明であるから、合理的な対処の仕方がわからないのだ。これらは生物が生き残ってくる過程で獲得してきた仕組みと言えるのかも知れない。
しかし人間は脳が発達したことにより、あれこれと考えることを止められなかった。そのため昔から、人知では計れない出来事に対して、その時点で考え得る事柄をあてはめたり、想像したりして人間は対処してきた。そういった物の中に、神や悪魔や妖怪と言った物が含まれているのである。
何か理解出来ないことが起これば、それは彼らの仕業であると考えられた。そして、そういった超常的な出来事に対して人が出来ることはほとんどなかった。ただ祈ったり、特別な力を持つ存在に頼ったり、生け贄を差し出したり、時には諦観を持ってやり過ごしてきたのだ。
ところが近年、人間は飛躍的に科学と文明を発展させた。その事により、今まで超自然的とされてきたことが、実は別に何の変哲もない、ただの自然現象であるとわかってきてしまったのである。
人は現段階で科学的に確かめられていない事柄、気持ちや感情の繋がり、物事の因果など、アバウトでつかみ所のない物を、胡散臭いものとして昔よりも遠ざけてしまったように思える。
例えば、「人のことを悪く思うと、自分にそれが返ってくる」という考え方があったとする。一見すると根拠がないのだが、好意の返報性だとか、感情と表情(や態度)の関連など、連関してくる研究によって説明できないことはない。
こういった感情などに絡んでくることは、状況や被験者の設定や環境など、変化や項目が多岐にわたるためなかなか研究しづらいとは思う。また、日常生活において、そういった物はなかなか目に見えないから、あまりリアリティを持つことも出来ないのだ。
感情や気持ちが与える影響を語ると、ともすれば日本では神秘主義と関連付けてみられることもある。無批判に受け入れてしまう人の中には神秘主義に没入していく人もいるとは思う。それはお勧めできないのだけど、決して非現実的で、超常的ではない作用が日常の中に溢れているのだと考えることが出来れば、普段の出来事に対する見方も変わってくるのではないだろうか。
それらはなかなか、コントロールすることが難しい。だから、自分の力を過信せず、謙虚な気持ちを持って行動できる。
本作の登場人物であるミカは、機械好きで、自立心、自負心に富んでいる。そして現実的だ。
最初は超常現象をバカにしていたが、カメラにそれらが認められると、一転して真剣に向き合うようになる。
ただ彼に問題があったとすれば、自負心が強すぎたのだ。
自分の住む家で起こっている現象を解決し、彼女を守るのは自分だという強い義務感は一種の英雄のようにも見えるが、地力や状況を見誤っていればただの無謀な挑戦でしかない。
目に見えない相手であったことが彼の判断を誤らせたのだろうか。「自分の力で何とかする(出来る)」という彼の決意が、惨劇を増幅させることになる。
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・趣向
超低予算ながら全米で観客動員1位を記録し、あのスピルバーグをして「リメイク不可能だからそのまま放映しちゃいなよ」と言わしめたという映画。
作品の作りとしては、全編、登場人物の回していたカメラの映像を編集したものと言うことで、色々な面で「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思わせる。(2作目が転けたらまんま)
最初はちょっとした怪奇現象が、だんだんエスカレートしていくという内容。
予算が少ないため、ハリウッド的な大がかりな映像表現はほとんどない。つまり、どちらかというと日本のホラーのように、心理的にじわじわと追い詰めていくタイプの映画。
ヒントはあるが、出来事の真実がなんなのかは具体的に語られない。終わり方も決して後味の良いものとは言えないため、モヤモヤを残したくないという人には向かないかも知れない。(個人的には刺激的だったし、色々考えた)
話の筋としては一種の悲劇なのだけど、一応破綻はないと思う。場所ではなく人について回るため、超常現象から簡単に逃げられないと言うことになっている。ミカの行動に疑問を持つ人は出て来るだろうけど、彼の性格を受け入れることが出来れば問題なく見られそう。
ただ一つ、専門家の件で、頼れる人は他にいなかったのか、と言うことが挙げられる。が、劇中で専門家に頼っても無理なのでは? と思わせる描写もあり、そういう意味で助かるための希望がひとつひとつ消されていくという点で、恐怖感を煽っている。
「ブレア・ウィッチ~」にしても本作にしても、以前どこかで日本のホラー映画の影響を受けているというようなことをチラ見したことがある。
実際どうなのかはわからないが、作中、それを思わせるようなシーンが散見された。
また、登場人物等に指摘されない怪奇現象もあるので、それらも合わせて「このシーンはもしかしたら」と探りながら見るのも面白いかも知れない。
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・個人的感想
映画のラストが衝撃的であり、その後低予算映画のためかスタッフロールが流れない。しばらく黒い画面が続くのだけど、その時に、劇中、怪奇現象が起こる際に発生する重低音が流れ続けている。
暗い館内と同居して、まさに今そこに「奴」がいるのかと言う感じにさせてくれたのが良かった。
説明があまりないため、考えるのが面倒という人には向かないのかも知れないが、個人的には「あれはああなのか?」とか色々考えられて面白かった。
まあそもそも、そんなに難しい見せ方ではないと思うけど。
また、個人的にはネトラレ(NTR)映画としても楽しめた(笑
ネトラレ属性のある人は、想像力をフルに発揮すればそういう意味でも楽しめそう。
女性にとっては、ストーカー被害的な恐怖を味わえる映画とも言える。一人の女を賭けた、男同士の(嫉妬やプライドによる)争いとも言えるわけだ。
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