ハゲタカ。

2009年6月14日 映画
 映画の「ハゲタカ」を見に行きました。個人的な感想としては、ちょっと、色々とタイミングが悪かったかなぁ、と言う気がします。

 日本の象徴とも言えるアカマ自動車は苦境に立たされていた。経営が悪化する中、アカマを狙うファンドの噂が囁かれる。企業再生家としてアカマの役員となっていた芝野は、かつての部下であり、敵、そして盟友の鷲津を訪ねる。鷲津ファンドを率いる鷲津は日本の閉ざされた市場に嫌気が差し海外生活を送っていた。芝野は鷲津にアカマを助けるように依頼する。
 そんなアカマを狙ってリュウ・イーファ率いるファンド「ブルー・ウォール・パートナーズ」が鷲津の帰国とほぼ同時に、TOB、株式公開買い付けを実施。
 正式にホワイトナイトを引き受けた鷲津ファンドは即座にブルーウォールパートナーズを上回る価格で買い付けを実施する。
 しかし予想外の事態が起こる。リュウは鷲津の会見直後に買い付け価格を大幅に引き上げることを表明する。鷲津も対抗するがファンドの資金力を上回る価格を設定されてしまう。
 価格やリュウのパーソナルに対する好感度も手伝い株主はブルーウォールパートナーズへと傾いていく。圧倒的な資金力の前に焦る鷲津は敵の情報を探るが、彼らの裏には中国の影が見え始め……。

 今回の映画はどちらかというと、金に踊らされる人間達の悲哀を描くことに焦点を当てているように思う。そのため、企業やファンド同士の駆け引きによるスピード感、スリル、サスペンス、カタルシスなどは少なめだ。そこを期待している人間が見ると、肩すかしを食うかもしれない。
 確かに状況は刻々と変化するのだが、その間を繋ぐあるいは作り出す平静な場面が若干長い。そのため間延びしているしている感じがしてしまう。全体的に起伏に乏しく、平坦な印象を受ける。
 また、脚本の問題だろうか。どうにも説明不足に感じる箇所があったり、あるいは扱う問題ひとつひとつに時間がかけられず、散漫に感じられる。

 例えばアカマ自動車が低迷しているとか悪化しているとか言うけれども、全くどうしてそうなったのかというのが口で簡単に説明されるだけだし、状況が悪いと言うことを実感させるような画があまり描かれていない。
 日本の状況に嫌気が差したという鷲津にしても同様だ。その後の日本でどううまく行かなかったのかと言うことがいまいちわからない。
 ただでさえ、リュウ・イーファの過去や、行動の背景となる心理などに焦点が当たっているのだから、彼とやり合う立場の人間にも心理的な葛藤の要素を与えるなり、明確にするなりしなければ釣り合いが取れない。
 そこがもう少し描かれていればもう少し映画にも高揚の場面が増えたのではないだろうか。

 テレビシリーズではそう言ったこともしっかりと描かれていた。裏付けがあった上での、その後の展開、行動だったわけだ。

 このハゲタカが映画化に動いているときに、実は昨年のサブプライムローンに端を発したリーマンショック、景気低迷、派遣切りなどが立て続けに起こり、世界の、そして日本の状況が一変した。そしてそれは脚本にも影響を与えたらしい。作っている最中に脚本がどんどん変更されたという。
 映画を見に行く際に、これが悪い方向に影響しなければよいのだがと思っていたのだけど、今回はちょっとマイナスに作用したのかなという気がする。

 扱うテーマを絞りきれず、また個々の心情の変化も練りきれていないように思う。もしこの映画が、この世界同時不況よりも少し前か、あるいは少し後、ある程度安定した状況で大局的に振り返る余裕が出来たときに作られていたならば、もう少し扱う素材に選択と集中を出来ていただろうし、発端、佳境、そしてその先への道筋を描きやすかったと思う。

 全くつまらなかったわけではないが、ちょっと個人的には残念だった。

 リュウ・イーファ役の玉山鉄二さんや派遣工役の高良健吾さんの演技は素晴らしかったと思う。またアカマの社長役、遠藤憲一さんも風格があったし、個人的には鷲津の部下役の志賀廣太郎さんの低音が。好きなんだよなあ。
 この映画には低音に魅力のある役者が続々出演しますが、個人的には断然志賀廣太郎さん。

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