初夏だというのに水をあまり飲まないのには理由がある。
 どうやら自分はあまり水を飲まない方が良いようなのである。過剰に摂りすぎるとたちまちのうちに胃腸が弱る。たちまちというのは語弊があるかもしれない。正確には数日中、もっと言えば2,3日中には弱まり始める。便が停滞する。あるいは、下痢になる。
 だからいい気になって、ちょっと「喉が渇いたかな?」と思われる程度ではなるべく飲まないようにしている。
 体が水分を欲しているか否かの感覚はだいたい心得てきた。それは口に含むか、あるいは飲み込んだときにわかる。感動がないのだ。
 体が本当に欲しているときと言うのは、体に染み渡るような、あるいは歓喜に満ちた嚥下感がある。どうぞお入り下さいませと言う、お迎えする態度がある。
 一方心底欲していない場合、ただ少し熱にあてられ、気分だけで求めているときと言うのは、喉を通ったときにその待望感がない。むしろ、口に含む前に抱いていた期待が、失望に変わることが多い。少しも水が美味しく感じられないのだ。
 そういうことがあるから、最近は慎重になっている。
 夏というのは気温が上がり、当然肌に受ける熱量も上がる。その熱を下げようとする余りに欲してしまう、陥穽がある。それを真に受けてどんどんと飲むと、体の中は水余り状態に陥ってしまう。
 結果、胃腸を弱めてしまうことになる。
 昨年の夏、毎日2リットルのペットボトル丸々一本の水を飲んでいた時期がある。当然体の調子は良くなかった。無理矢理飲んでいる面もあったけど、一方で体は水を欲する。喉は確かに渇くし、飲みたいという欲もあるのだ。だから飲んでいた。
 ところがそれはどうやら体に悪いのではないかと思うようになった。水をたくさん飲む健康法はある物の、少なくとも自分にそれは合わないのではと思い、意を決して控えた。喉が渇いても極力飲まないようにした。
 そうしたら、意外にも結構もつのだった。
 汗もかくし、尿も出る。今までの自分が摂りすぎていたのだと知った。安易に水に走っていたのだ。
 今でも少し、気が緩むとついつい飲んでしまう。しかしやはり、そこは改めて気をつけなければいけないのだなと、最近また思ったりもした。

コメント