世界が闇に覆われ大地が枯れ果て、
強風と高波、強震とマグマで生命が次第に活力を失う中、
人もまた文明を後退させながら、
それでも生き残ろうと歩き続けた。
しかし一旦狂った巨大な歯車は、今や人類の手におえる物ではなかった。
黎明期に逆戻りしてしまった人間たちは、
かつての自分たちがそうしたように、
自然の世界に神を見い出し、恐れ、祈りを捧げた。
神よ、私たちはどうすればいいのでしょうか?
お願いします、我々をお救いください。
神よ、その御言をおきかせたまえ―――。
やがて流れの速い暗雲にイカズチが轟き、
一つの燐光が雪のように舞い降りた。
大衆の頭上にたゆたうそれは、神の使いであろうか。
一糸の希望を胸に、彼らは言葉を待った。
そしてやがて胸の中に、荘厳な声が響き渡った。

「このあいだ、玉ねぎのスライスにマヨネーズをかけて食べたんだけど、なんか、そんなに美味しくなかった」

強風吹きすさぶ中、光は跡形も無く消え去った。

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