夢。

2004年11月19日
 みんなが笑っていた。
 イスに座って壇上の先生を見ているけど、みんなそわそわしていて話なんてたぶん聞いていない。ニヤニヤしながら隣の席の顔を見たり、イスから立ち上がったり、秩序とか規律とか言う言葉がこの世界に無いみたいだった。
 そういう自分も例外じゃなかった。心の中はうきうきして、じっとしていることができない。今笑顔を作るななんて言われたら、そんなことできるわけ無いよと言ってしまうだろう。
 でも、そんな事を一度も言われないのは、先生達も僕らと同じだからだ。校長先生はマイクに向かって卒業式のために用意した文章を読み上げながら、ずっと笑っている。脇に立っている教師達もやっぱり同じだった。
 この体育館にいる人間のみんながみんな、どうしようもなく楽しいのだ。ざわついていて、静粛な様子なんてどこにも無い。
 ずっとこんな調子で卒業式は終わってしまった。
 みんな体育館から出ないで、走り回ってはしゃいでいる。僕もそれに混じる。馬鹿みたいにはしゃいで、飛び跳ねて、喋り続けた。
 湧き上がる歓喜に突き動かされるまま騒いだせいで、体がくたくたになってしまう。それでも気持ちだけは冷めやらないから、床にへたり込んで大声で笑いあった。
 何か感じて、ふと振り向いた。
 黒い壁が動いている。
 みんなが、体育館の外に出て行くのだ。こちらに背を向けて、ぞろぞろ歩いていた。
 急に、寂しくなった。
 さっきまでの活気が夢だったみたいに、打って変わって静かになっていく。玄関にいる人達の声が、遠くの潮騒のようだった。
 僕はここにいてはいけないのだ。
 静かな中で、それに気付く。
 寂しくて歪めていた顔を、またゆっくり笑顔に変えていった。周りからは悲しそうに見えるかもしれないけど、いつかは訪れる「その時」なのだから、仕方がないのだ。
 出口に向かって歩き出す。
 体育館に残った在校生を見た。
 頑張れよ、後輩たち。
 そして、僕は、そこから卒業した。
 
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とにかく楽しかった。
ほとんど内容は忘れてしまっているけど、学生服を着て、体育館で騒ぎまくっているのは覚えいてる。
ほんとに楽しかったのだ。何か知らないけど、物凄い衝動に突き動かされていたような。今夢を思い出そうとすると、内容が浮かばないかわりに、胸が凄くワクワクして、嬉しくなる。
それで、夢から覚める直前に、どうしてか寂しくなっちゃうんだ。確か理由があったと思うんだけど。
何だったんだろうかあの夢は。
知り合いも出ていたような出ていないような。
訳わからん。
ただ、できればもう一回みたいなぁ。

 

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